さて、最近ヤフーニュースで、親知らずを一気に抜いたことで、顔が別人のように腫れ上がった指原さんの画像が話題になっていました。
ツイッターなどを見ていると、「親知らずを一気に抜いても大丈夫なの?」という意見が最も多かったような気がしました。そこで、歯科医である私がコメントしたいと思います。
一気に抜歯することは可能
親知らずは人によって本数が異なります。1本の人もいれば4本の人もいます。
抜歯が適切かどうかも人によって異なります。抜歯自体は、時間と本人の意志があれば可能です。
余談ですが、24時間対応の芸能人向けの歯科医院というものもあるそうです。
ただし、通常は片側のみを抜歯します。右のみとか左のみとか。
腫れること自体は、3〜4日、1週間もあれば元の顔に戻ります。
問題は、食事が摂りにくいことです。
なぜ、食事が摂りづらくなるのか?
抜歯した後は、抜歯した穴に血が溜まります。これが肉になり、やがて皮が被ってきます。かさぶたのような感じです。穴があいた側でご飯を食べるのは中々難しいです。
はじめは食べ物が挟まれば痛みを感じますし、非常に食べにくい状況です。この穴がある程度落ちすのに2週間から4週間かかります。
以前と同じような歯茎の姿になるには6ヶ月かかります。
抜歯した後の傷は自然治癒になります。そのため、大切な時期に食事を取ることができない、噛むことができないとなれば、栄養を取ることができません。傷を治すためには栄養が必要になります。食べられないことを悩みに感じてる方には、「じゃあ、入院してください。」と言います。半分冗談ですが、栄養の大切さを知ってほしいです。
抜歯後のケアを守らないと、腫れが長引き、痛みが続き、再手術が必要になるなど、笑い話では済まされない状況になります。
私が学生の時に、親知らず抜歯後の痛みがひかないことを訴える芸能人の方がいらっしゃいましたが、教授に生活態度を指摘され、しょんぼりしていました。激しい運動、飲酒、睡眠不足の状態になることは避けるべきです。
こういった抜歯後のことを知っていると、まず左右同時に抜歯することを諦める人がほとんどだと思います。
どうしても時間が取れない、留学を1ヶ月先に控えている、術後のサポート体制など、条件が揃わない限りは左右の抜歯は行わないことが通例です。
自分自身を犠牲にする覚悟がなければ、計画的に抜歯をしてください。
親知らずを抜歯して腫れる場合
親知らずを言っても、生え方によって抜いて腫れない場合もあり、その程度が変わってきます。
斜めや真横に向かって生えていて、 周りの骨を削らないと抜けない場合
親知らずの周りの骨は硬いので、削れば身体が反応して、腫れます。
下顎の親知らずは横に向かって埋まっていることが多く、この周囲は最も硬い骨です。ですので、腫れる頻度も高くなります。
いたずらに時間がかかってしまう場合も腫れやすい
埋まっていなければ、30分もかからず終わります。
埋まっている場合は、60分程度かかる場合があります。
技術的な問題で長引けば、治療に時間がかかってしまい、腫れにつながります。
乱暴な手技は腫れを増やす
ここでいう乱暴な手技とは、骨を削るために冷やしながら行うプロセスを丁寧に行なっていないことをさします。
骨を削る場合には、水で冷やしながら行うことで身体の負担を減らし
ノミで叩かれた経験がある方もいますが、これは熟練の技で熱が出ないため、骨のダメージは少ないと言われています。ただし、現在ではほとんど行われていないと思われます。
顔面まで腫れる理由
親知らずの周りは、様々な筋肉や唾液腺、結合組織があります。
組織同士の隙間もあり、親知らずの抜歯によって怪我を治そうと炎症がおきます。隙間を通って、その周りに波及します。これが顔面まで腫れる理由です。
腫れることは、怪我を治す体の反応です。
腫れる時にはしっかりと腫れてもらったほうが、怪我は早く治ります。
今回のニュースの事で誤解を生まないことを希望します。
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