北川デンタルオフィス院長の北川です。
今回も他院から転院なさった患者様の転院理由を紹介したいと思います。
(定期診断を3ヶ月に一回近所の歯医者で行なっている。)
まだ本格的な虫歯の治療を受けたことはないのですが、奥歯の溝の部分が黒くなっていて虫歯ではないかと心配していました
3か月毎の定期検診では30分でクリーニングを受けるのですが、虫歯が進んでいないかは診てもらえているのか少し心配になっています。歯医者さんは最後にちらっと診て終わりで、「まだ治療しなくて大丈夫です、様子を見ましょう」と言われるだけです。
自分でも、母親に見てもらってもどうも黒い部分が大きくというか濃くなっている気がするのです。痛くはないのだけれど、大きくなって歯をたくさん削るのも嫌だし、怖い。お母さんと相談して、セカンドオピニオンを取ることにしました。
診査
Hさんの奥歯にの溝の部分は黒くなっていました。虫歯が観察しやすいX線撮影法(咬翼法)を行いました。
X線ではわずかな影を見つけることができました。
手術用顕微鏡で奥歯の溝を拡大して見ていくと、内側で虫歯が広がっているのが分かりました。内側で広がると、外からは透けて黒さが見えてきます。
これが、Hさんが「黒い部分が大きくなってきた」理由です。
また、全体的に歯に白い斑点のような模様がありました。
訊くと、甘いものは好きだそうで特に時間を決めずにつまんでいるとの事。
白い模様は歯が溶けた跡です。
1日3回、ちゃんと歯を磨いていても、その間にずっと歯が溶けている状態が続いているのです。
Hさんは虫歯の抵抗力がそれほど強くないのでは、ということも推察されます。
かかりつけ医は、なるべく削りたくない、という考えから黒くても再石灰化(虫歯のなりかけも唾液中のミネラルが沈着してミクロでは修復されること)を期待したのでしょう。(参考:虫歯は自然治癒するというのは本当か?)
しかしながら、一度穴が開いて、唾液が届かない奥まで虫歯が侵入してしまえば
経過観察は虫歯の広がりを待つだけで逆効果です。
治療開始
麻酔をして、奥歯の溝の黒く虫歯になった部分と内側に浸潤した虫歯を取り除きます。虫歯が小さいうちは、極力虫歯のみを削り、キレイな歯を削らないようにします。
この治療は裸眼では不可能です。拡大鏡や顕微鏡を使って丁寧に取り除きます。虫歯を溶かす薬も有効です。虫歯の取り残しがないか、虫歯のみ色が付く染色液で確認、取り除く、という作業を繰り返して虫歯が完全に取り除けたら、唾液が絶対に入らないように乾燥させてからコンポジットレジンという強化樹脂を詰めていきます。
かみ合わせを確認、形を整えて磨けば治療は1回で終了です。
まとめ
虫歯が治るのはミクロの世界で溶けた表面が修復されるだけです。穴が開いてしまったら治りません、進行するのみです。
近年、「虫歯は治る」というフレーズだけが独り歩きをして、保護者が「歯をけずる歯医者はよくない」という誤解をされているケースもあるようです。
どこから虫歯を治療するかは、私たち医師でも悩む時があります。
様々な検査を行って本当に必要な時だけ行いたいと考えています。
X線撮影(咬翼法)、拡大鏡や顕微鏡による診査、唾液や食習慣などからの虫歯のリスク診査、また虫歯の進行度合いを光で測定する機械も参考になります。
定期的にメインテナンスに通院すること、虫歯のリスクを知ること(唾液検査、食習慣)治療が必要な際は画像で説明を受けると良いと思います。
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