最近、患者さんから「虫歯は削らなくても治る」「虫歯を自然治癒させる方法がある」という話を聞く機会が増えました。
これは調べると、試してガッテンなどのテレビ番組で取り上げられたことがあるようです。
虫歯を削らなくても治るなら、こんな嬉しいことはありません。でも、本当に治るのでしょうか?
虫歯は自然治癒するのか?
歯にくっついた歯垢の中の虫歯菌が出す酸によって歯のミネラルが溶かされて、歯が腐っていく病気です。
虫歯は自然治癒するのか?
早速本題に入ります。
私たちの言葉では自然治癒とは言いませんが、「再石灰化」という表現のことだと思われます。
実は、歯の表面では酸で ミネラルが溶け出し (脱灰)、 唾液中のミネラルが沈着する (石灰化)が繰り返し行われている状態なのです。
つまり、歯が溶けては再び固まるというような状況が日常的に行われているのです。
この再び固まる事を再石灰化と云います。これには唾液中のカルシウムなどが溶け込む役割を担います。他には歯磨き材に含まれるフッ素などはさらに歯を強くするように再石灰化します。
ちなみに、この現象はずっと以前からわかっていることです。
本題どんな虫歯でも治るのか?
虫歯は進行度で分類されています。
C1(エナメル質内の虫歯)
C2(象牙室内の虫歯=痛みを感じるようになる)
C3(歯髄まで達する虫歯)
C4(歯の根っこが虫歯=抜歯に至る)
この内、歯が溶け出しても未だ穴が開いていない状態(COと一部のC1)が、歯が再び固まる、みなさんが期待している歯の自然治癒ができるものだと思ってください。
穴が開いてから歯医者さんに行く人が多いと思いますが、そうなった時には、もう自然治癒は難しい状態になっています。
ちなみにこのことはこちらの記事でも取り上げています。
参考:歯は痛くないけれど、黒いのは虫歯なの?
ヒビは治るか?
ヒビが再石灰化するという表現を散見しますが、ヒビは治りません。そもそもヒビは歯に力がかかり続けて起こるものです。
そしてヒビの問題は歯と歯の間によく起こることです。歯と歯の間は最も磨き残しが起こりやすい場所です。磨き残しが多いということは歯垢が多い。歯垢が多いところにヒビがあれば、ヒビに沿って内部に虫歯が進行しやすいのです。
一生懸命に磨いて予防すればヒビにそって虫歯が進む事を防ぐことが出来ますし、ヒビに沿って溶けた表層は再び固まるでしょう。ただし、ヒビが再びまっさらの歯に戻ることはありません
まとめ
- 虫歯はまだ穴が開いていない、表層だけなら、再石灰化(自然治癒)します。
- 再石灰化のためには、唾液が必要です。もちろん、歯をよく磨き、新しい汚れを付けないことが大前提です。
- 唾液中のカルシウムだけでなく、歯磨き材のフッ素も再石灰化を促します。
- ヒビは再石灰化でも治りません。ヒビに沿って進みやすい虫歯の進行を止める事はできます。
自然治癒を望むのであれば、歯が痛み出してから対策するのでは、ほぼほぼ手遅れです。そのため、定期的なメンテナンスを行い、自分の口内の状態をしっかり把握しておくことが重要になります。
参考:歯が痛くないのに、歯医者さんに定期検診に行く理由とは?
ちなみに、虫歯が進行し、ひどい虫歯になってしまうと、以下のような治療が必要になります。
参考:ひどい虫歯になぜなるの?ひどい虫歯ができる原因と治療方法まとめ