ここ数日は暖かく、春の兆しが見えてきました。まだ水道水も冷たく、夜風の冷たい日もあります。冬は歯がしみると訴える方が増えますが、1年を通してしみるという方もいます。以前に紹介した歯が冷たいものにしみる場合(知覚過敏)に考えられる状況もご参考ください。今回は歯がしみるために、怖くてクリーニングにいけない女性を紹介します。
歯のクリーニングをしたいけれど、しみるのが怖い
30代女性、働き始めた頃から歯医者でクリーニングを受けると歯がしみて痛い。しみる場所はその都度変わる。あちこち痛い時もあれば、特定の歯が痛いこともある。いつ痛みがやってくるか分からず、段々と怖くなってきて、歯医者への足が遠のいてしまった。
診査
・虫歯はあるものの、痛みが出るような状況とは考えにくい
・風をかけるとしみる歯があるが数秒で痛みは消える
・冷蔵庫に入っているような飲み物、食べ物はしみる
・歯ブラシは柔らかめで研磨剤の含まれていないものを使う
・歯肉炎という歯周病の初期段階はある
・歯茎はわずかであるが、下がり始めており、歯根が露出し始めている
・僅かだが揺れている歯がある
・年齢にしては歯のすり減りが目立ってきている
・顎の関節は異常なし
・顎周りの筋肉はコリと痛みがある
・猫背で巻き肩が顕著
・首肩のコリが強い
診断
・知覚過敏症
・原因は無意識に起こる噛み締めや歯ぎしりによって歯に過重負担がかかっているため。
・歯にかかる過重負担は内部の歯髄に影響を与えて軽い炎症を引き起こしてしみる症状が出る
・歯茎が痩せたのは歯にかかる過重負担が一つの原因
・猫背、巻き肩は顎周りだけでなく全身の筋肉と舌の緊張を招き、噛み締め癖が出やすくなる。
治療
・今までは患者が我慢すること、治療も痛みが出ないようにクリーニングもおざなりになってしまっていた。知覚過敏症が落ち着けばクリーニングに対する不安や恐怖は和らぐと考え、その場しのぎではなく原因にアプローチを行うこととした。
・姿勢の改善のためのトレーニング、セルフメンテの学習
・舌の位置は口蓋であること確認、意識して付けるよりも姿勢を正す方向を優先
・鼻呼吸を維持するため、アレルギー鼻炎がある時は耳鼻咽喉科で対応
・歯ブラシ、歯磨剤は現状でOK
・咬み合わせが引っかかって強くあたっている所のみ、微調整
・夜間就寝時やデスクワーク時など使える範囲でシリコンのマウスピースを使い上下の歯が強く接触するのを防ぐ
治療結果
・1ヶ月ほど経過した所でチェック、完全にしみる感じがなくなった訳ではないが、多少冷たい飲食でも平気になった
・クリーニングの器材を歯に当ててテスト、患者さんの反応を確認
・最初は怖くても自然な事であり、体験を積み重ねていくことを提案、同意得る
・結果、初回のクリーニングでもほぼ全体のクリーニングが行えた
まとめ
・今回は患者さんの恐怖心が芽生えてからまだ日が浅かったこと、患者さんのメンタルが前向きであったことが早い段階での結果につながった
・患者さんに我慢をさせればさせるほど恐怖心は積み重なり、増々治療は難しくなっていく。
・仮に麻酔をしてのクリーニングでは一度に全体を行うことはできず、保険治療の範囲では困難になる。
・姿勢は一見、歯と関係ないように思えるが、顎に不用意な緊張をさせないためには欠かせない部分である。