グーグルで「インプラント 費用」と検索すると、たくさんの定額制のインプラント治療の案内が出てきます。
また、素材ごとに治療料金が表示されており、インプラント治療を検討している人は、その料金を参考にしているように思われます。
しかし、転院で来院される患者様がメインの当院から言わせると、この料金だけでの判断はとても危険です。
治療時間に限りがあり、手術の回数を重視している場合が多いからです。本来ならば、手術の回数実績よりも少ない治療回数で丁寧に仕事をする医院の方が、治療全体のクオリティーが上がります。結果として、治療を進める上で、意図しない事態を引き起こす可能性もあります。
▼インプラント治療は選択を間違えると後悔することがあります。
インプラントを「やらなきゃよかった」と後悔する前に確認しておきたいこととは?インプラント治療の失敗の原因とは?
そもそもインプラント治療とは、素材で価格を出せるものなのか?
事実として、素材の違いによる費用の差はわずかです。
しかしながら、素材で費用が大きく変わってしまうのはなぜでしょうか?
とは言っても、素材の良し悪しの差が全くないと言ってしまえば、嘘になります。しかしながら、治療の難易度に比べると大きな問題ではありません。
一人一人の口内の症状は異なります。当たり前のお話ですが、インプラント治療を必要としているわけですので、健康な口内であるという前提はありません。
ですので、インプラントの治療は、本来であれば、一人一人の口内の状態による治療難易度で変動するのが本当のところです。
では、具体的にどんな症状がインプラント治療の難易度を上げるのでしょうか?それは、次のような症状が関わってくることが多いです。
歯周病
歯周病は歯に付いた歯垢歯石の細菌によって歯を支える歯肉、歯槽骨、歯根膜などが破壊されていく怖い病気です。日本人の30代以上の8割が罹患しているという病気です。歯を失う理由の第1位です。ということは歯周病で歯を失ってインプラント治療を望む方は多いと言えます。
歯周病は骨が溶けていく病気ですから、インプラントを植える骨の量が不足する可能性があります。また、骨がなくなることで歯はぐらつき、噛み合わせも崩れて不安定になります。
そして歯周病を放置したままインプラント治療を行うと、口内の歯周病菌がインプラントにも感染します。歯磨きやフロスなどのセルフケアができない人にインプラント治療を進めればインプラントが歯周病に感染して歯と同じように脱落する危険性が高くなります。
周りの歯がぐらついているところにインプラント治療をすると、しっかり噛めるのはインプラントだけということになります。これではインプラントに過重負担がかかり、やはりインプラントを支える骨がなくなりインプラントを失う危険性が高まります。
噛み合わせ
インプラント治療にとって噛みあわせは歯周病と並び、治療の成否を握っています。なぜなら、インプラントを失う原因が、インプラントの歯周病と過剰にかかる力だからです。
歯ぎしりや食いしばり(噛み締め)の癖がある人はマウスピースでインプラントと歯を守る必要があります。
歯周病で歯がぐらついているのであれば先に歯の治療が必要です。インプラントはしっかりしていますが、自分の歯と共存させるには、噛み合わせのバランスを取ることです。インプラントで支えるのではなく、自分の歯の中にインプラントがたまたまあるような自然な力の配分にしないと負荷がかかり続けます。
歯を失ったり、歯周病が進行して歯がぐらついたり、あるいは歯科治療によって噛み合わせのバランスが崩れてしまったりと、インプラント治療を検討する段階でかみ合わせに問題がない人のほうが少ないと言えます。
噛み合わせはインプラント治療を検討する上で欠かせないものです。ところが、噛み合わせについては根本的な解決が難しいのも実情です。理想的なかみ合わせでなければ、インプラント治療が出来ないわけでもありません。
それでも噛み合わせに関しては出来る限りの治療や配慮が必要です。なぜなら、 治療した後は歯はすり減る一方だからです。噛み合わせを考えなければ、歯やインプラントにたくさんの負担がかかります。治療直後さえ良ければ良いわけではありません。
まとめ
そもそも、素材費で見積もることは慣習のようなものです。歯科治療の自費診療については、素材が安い=治療費そのものが安いという説明の仕方が医療側に植え付けられています。これは過去の歯科治療の自費を説明する場合の銀歯か金歯かセラミックかという素材だけで患者さんに説明していた名残であると思われます。
治療費には原材料やかかるコストが入ります。インプラント治療はインプラントという素材がそれなりの原価になりますが、当然この他に「治療費」という技術代を合算して治療費になります。問題は、この治療費が安ければ、歯周病、噛み合わせ、その他の要因の治療費が加味されていない場合や歯科医が手術以外にかける時間、例えば説明する時間を少なく見積もっている可能性があることです。
インプラント治療が定額制や格安であることの考えられるリスク
インプラント治療を定額制で売る歯科医院もあります。これにもリスクがあります。
1.流れ作業が必要になる。
インプラント治療を専門に扱うような歯科医院は、たくさんの患者さんが来院します。安価で治療を行うには、一人ずつの治療にあまり時間をかけることができません。多くのスタッフにそれぞれ役割が決まっており、流れ作業のような感じで治療が行われます。インプラント治療に限らず歯科治療は画一的な治療になりません。
流れ作業では、患者さんの訴えやメンタル面のケア、歯ぎしりや食いしばりの癖、顎関節の状態、虫歯や歯周病、根の病気の進行などが見落としがちになります。
2.治療なのに必要な時間が充分に取れない。
これは、流れ作業が影響するものなのですが、安価で提供している場合は治療にかけることができる時間も限られてきます。
そのため、上記のような患者さんの訴えを流してしまい、歯科医が小さな問題と思い込んでいたところが、実は痛みや噛みにくさを生む原因だったということもあり得ます。
3.経験のある歯科医が最初から最後まで診てくれるとは限らない。
組織として動いている歯科医院の場合、担当歯科医師が複数になる場合があります。手術の執刀は院長で、その他の治療は勤務医だったり、経験の浅い医師かもしれません。患者さんは複数の医師に自分の訴えや気をつけて欲しいこと、希望を説明しなければなりません。合理的な反面、患者さんの細かいケアに手が届きにくい側面はあるでしょう。
また、待合室などで、認定書で壁をぎっしり埋めている歯科医院もありますが、その認定書を持っている歯科医が必ず担当するわけではありません。残念ながら認定書ホルダーが、腕の良い歯科医を証明するとも限りません。
4.安価なメーカーなインプラントを利用している可能性が高い。
インプラントメーカーはたくさんありますが、論文に上がってくるメーカーは一部です。
そして近年問題になっているのは、過去に受けたインプラント治療の歯の部分のやり直しをしようとしてもメーカーがすでになくなっていたり、部品が製造中止になっていることです。
仮に、インプラント治療の原価を安さの理由にしているのであれば、こういったところで問題が発生しやすいと考えられます。
世界的に多くのシェアを占めている、論文に多数上がってくるメーカーを選ぶことで先々の心配は少なくなると思われます。
インプラント治療で起こった過去の事例
北川デンタルオフィスは、転院でお見えになる患者さまが多い完全自費診療の歯科医院です。
当たり前になってしまうのですが、最初から当院を選択する方は少数派です。なんらかの問題が発生して、当院に転院をご希望される方ばかりです。
例えば、過去に記事化させていただいている患者さまの事例では、歯を健全な状態に保つことを目的のインプラント治療が、口内の健康を悪化させていることがありました。
ひどい歯周病を治療せずにインプラントを入れられて、インプラントが次々と抜け落ちていくのを食い止めることが出来た例
隙間やインプラントのネジが露出しているのがわかります。
インプラント治療前に歯周病の治療を全く行わず、ただインプラントを埋められそうな場所に埋めただけというものでした。仮歯が入りましたがとても噛めるような状態ではなく、歯や顎の痛みが強くなり当院にお見えになりました。
歯だけではなく、インプラントを支える骨の破壊が確認されましたので、やむを得ず、インプラントの除去と新しくインプラントの埋め直しを行い、数年の期間をかけて治療しました。無事、インプラントの治療と歯周病からの回復が完了できてよかったと思います。
歯周病の治療を行わずに、インプラント治療を行うことには、このようなリスクがあります。
ちなみに、インプラント治療は、虫歯治療の最終手段のように思われていますが、骨が大きく溶けた状態ではすぐに治療することができません。この場合は、骨を治癒してから、または骨を移植してからの治療が必須になります。
「インプラント治療が定額だから、最終的にインプラントにすればいいや」みたいなことをお考えの人は少ないと思いますが、虫歯を放置すると根の先に膿を作り骨がなくなり、さあインプラント治療をと思っても治療期間も長く費用も多くかかることになります。
まとめ
インプラント治療が必要な段階で、インプラントの埋め込みだけで事が足りないケースの方が多いです。
骨内にインプラントを入れるだけで済むという方はごく少数です。ほとんどの方が歯周病や噛み合わせの問題を抱えています。
まずは、インプラント治療についてどんなものなのかを理解していただくのが大前提になるかと思います。
歯周病を患っていれば、十分な治療を経てインプラント治療を行うべきです。何年も何十年もかかって進行してきた歯周病です、急いで治そうとしても身体が付いてきません。ゆっくり丁寧に治療することが後々のためになります。
そして、インプラントは、人工の歯を埋め込むことです。噛み合わせがしっかりしていないと、骨の破壊にもつながり、この部分にも目を向けたいところです。
噛み合わせは歯周病ともつながっています。グラグラした歯では噛み合わせは病的な状態に変化していきます。ただ骨の中にインプラントを埋め込むだけではなく、歯になってからどれくらい長持ちさせることができるか?そのためには噛み合わせに十分に整えてから行うことが必要なんですよね。
もし、インプラント治療でお悩みのことがございましたら、遠慮なくご相談ください。また、インプラント治療に関するご不明な点に答えたコンテンツである「インプラント治療の前に理解しておきたいインプラントQ&A」を参考にしていただければ幸いです。