インプラント治療を受けるのであれば、名医と呼ばれる歯医者さんにお願いしたいと思うのは当然でしょう。
しかし、調べることができる範囲でみると、インプラントを何本行ったかという治療実績や書籍発刊、論文投稿などがありますが、果たしてそれで名医に出会うことはできるのでしょうか?これらは一種の権威付に使われることがとても多いからです。
では、インプラント治療におけるいい歯医者(名医)とは、どのような人のことを指すのでしょうか?
ただし、ここでの名医の定義は、自分にあった良医とします。基本的に技能的に優秀な良医を探してもコミュニケーションがうまくできなければ治療は良い方向に進まないからです。そして、第三者が決めるものではなく、患者様一人一人の主観が決めるものだからです。
インプラント治療のことをしっかり理解しないと、後悔してしまうことが多い治療です。
インプラントを「やらなきゃよかった」と後悔する前に確認しておきたいこととは?インプラント治療の失敗の原因とは?
1.インプラント治療でありがちな判断の基準
名医を探したいと思っている方は、なんらかの形で、歯科医に不信感がある人たちが少なからずあると思います。
そんな時に、客観的に判断できる数値などで判断しようと思うのですが、その判断は正しくないかもしれません。
1-1.年間治療本数
駅や路上での看板で見かける最もわかりやすい例です。もし、名医を選ぶのであれば、この実績だけで判断するのは確実ではありません。
インプラントに特化した医院では複数のドクターがインプラント治療に携わっています。インプラントの手術を行うだけが名医ではありません。その噛み合わせの構築や歯を作っていく過程、そしてメインテナンスも含めてインプラント治療です。
1-2.書籍
著書がある歯科医の方も多いですが、これも良いとは言い切れません。
なぜならば、著書には、商用出版と自費出版があり、自費出版はお金さえだせば誰でも出せるからです。
つまり、著書も広告の一つなのです。
名医であることと著書(自費出版)の有無は全くの無関係です。
一方、歯科学会への論文や歯科専門誌への寄稿は学問的に精力を注いでいる結果ですので、多いに評価すべき点です。
1-3.認定証や修了書の数
カウンセリングルームなどに、壁びっしりの資格の認定書が飾ってある歯科医が名医であるのかもまた別の話です。インプラント治療で最も重要なことは、治療の技術の高さと丁寧さと倫理観であり、研修の数だけではないからです。
診療室とは別にカウンセリングルームを備えている医院は珍しくありませんが、
インプラント治療について名医がじっくり時間をとってカウンセリングしてくれるかは認定証や修了証の数とは関係が薄いと思います。
2.歯科医が判断する名医の条件
2-1.ヒアリング、カウンセリングの時間が十分にある。
名医とは解釈によっては、的確に対処できる医者のことを意味します。
インプラント治療を最初から希望する人には、「なぜ、希望するのか?」という理由があります。その理由に照らし合わせて、ベストの治療方法を提案するには、ヒアリングの時間が十分であることが必須です。
また、インプラントに特化した医院でない場合は、来院当初はインプラント治療を希望していない場合も多々あります。インプラント治療は怖いという思い込みが強い場合や、ネガティブなイメージを持っている場合もあります。
ヒアリングやカウンセリングに十分な時間を設けると、コミュニケーションを行っていく事で、インプラント治療を希望するようになることは珍しいわけではありません。ここで、最も大事なことは医師がインプラントありきで説得することがないことです。患者さんが医師に質問ができる事、その質問に誠意を持って応えていること、患者さんの利益を最大限に考えて、客観的な立場になって治療の提案をする歯科医師はその患者さんにとって名医になると思います。
2-2.チームアプローチ
医院の中に手術を担当するドクター、歯を作ることを専門にするドクターがチームアプローチを行う医院もあります。この関係性が密であれば、専門性が高い医師によってさらなる高度な治療が可能になります。
しかしながら、一般歯科医院にインプラント治療を専門とする医師が手術やカウンセリングの時だけ行く場合もあります。いくらインプラントの先生が名医と言っても、手術の後やメインテナンス時にトラブルが起きても迅速かつ適切に対応し切れないのではないでしょうか。
また、インプラントだけ大学病院やインプラントに特化した医院で治療することも選択肢でしょう。しかしながら、こういった医院や病院ではメインテナンスを継続して行える環境にないことが多いようです。
インプラント治療とメインテナンスを行っている歯科医院から紹介を受けて受診する、またはメインテナンスができる近医を紹介してもらうようにしましょう。
2-3.カウンセリングではトラブルが起きた時の事も説明する
インプラント治療は100%はありません。万が一の事が起きないとも限らないのに良いことばかり説明するのは名医ではありません。
インプラントが万が一にも骨と付かない場合の対処法や、治療が終わってからも、起きるかもしれないインプラント周囲炎などのトラブルと対処法について必ず説明があります。
2-4.事前の検査を十分に行っている。
X線CTだけではなく、顎まで含めて口内全体の診査が必要です。
インプラント治療を行う前には、虫歯、歯周病、歯並びや噛み合わせ、顎関節、噛む筋肉、唾液、噛み癖(歯ぎしりや嚙みしめ)など様々な角度から総合的にお口の中の状況を診断する必要性があります。X線やCTだけでなく、パノラマX線、デンタルX線で歯がない部分のみならず残っている歯も精密に検査します。
また、CT撮影を行う際には骨だけではなく、作る歯をシュミレーションしてから撮影することが重要です。
医科的な情報も重要です。インプラントを必要とする方は高齢者が多くなり、基礎疾患を持っていることも珍しくありません。長期的な内服薬は骨の代謝に影響を与えるでしょう。喫煙は最も避けたい生活習慣です。
栄養状態も傷を治す上では大切な情報です。多くの方が栄養不足であり、気にしている人でも足りている方が少ないことが多いです。
例えば、鉄はエネルギー代謝に必須ですが、不足している代表格です。野菜やプルーンなどの無機鉄ではなく、赤身肉やレバーに含まれるヘム鉄が必須なことはあまり知られていません。インプラントの手術後は栄養が摂りにくくなりがちです。こういった栄養面からも検査や問診を行うことで治療の成功率は高くなり、患者さんの負担も少なくなります。
それほど情報が必要なのだろうか?と疑問に感じる人もいるでしょう。検査は何も問題がなければそれも重要な情報です。そして、ここまで行っても医療に完璧はありません。何か予期せぬ事が起きた時も資料がそろっていれば対応が早くできます。その時になってなぜ調べておかなかったのか、となることもありません。名医であるほど、事前の情報はしっかりと調べておくものです。
3.まとめ
名医を探すことはとても難しいことですが、情報収集ばかりしていてもらちがあきません。インプラント治療のことを知って、行動をとることが重要です。
3-1.事前の情報を集めましょう。
前述の情報を確認しながら、ご自身の条件に合いそうな歯科医院を探しましょう。一番は、インターネットからの情報収集が手軽ですが、そこでの情報は半分程度の信頼性です。
3-2.次に予約をして受診します。
この時に必ず自分の状態を説明するためのメモを持参しましょう。
名医がすべてを察してくれるわけではありません。自分にしかわからない事をしっかりと伝える努力が必要です。
メモは手書きでも構いません、歯医者さんに渡せるようにコピーしていきましょう。
過去:ここ数年の歯や口内の変化と気づいていること
現在:痛みや困っていること、費用や通院の条件など
未来:この先どうなりたいかを具体的に書く
他に内服の薬やサプリメント、医科の病歴があればわかる資料などを提示しましょう。
その上で、検査結果のX線や見積りがもらえるのかも確認しましょう。
セカンドオピニオンの度に撮影すると負担が大きくなります。
もし、この段階の歯科医とのコミュニケーションで違和感を感じたのであれば、
複数の歯科医院にセカンドオピニオンを依頼しましょう。
「診断した歯科医に悪い。」などの気持ちは不要です。
結局、治療を受けるのはみなさんですし、その歯と付き合って行くのもみなさんだからです。
納得の行く形で、治療を受けるようにしましょう。