X線を撮影して、担当の歯科医からは「骨がないから骨の移植が必要だ」と言われました。
Gさんは骨の移植術を受けようと決めて、実際に骨の移植術を行ったのですが、結果は失敗に終わったそうです。
やっぱり出来ないのか、と諦めていましたが、今度は下の奥歯が歯周病で抜歯になってしまい、上も下も入れ歯になってしまいました。そこでもう一度本当にインプラントができないのかを確かめるために、当院にいらっしゃいました。
この場合の骨の移植には大きく分けて2種類あります。
参考 ①副鼻腔(上顎洞)を狭くすることで上に向かって骨を足す手術(サイナスリフト、ソケットリフトなど) ②歯があった歯茎の方に向かって骨を盛り上げるように足す手術(オンレーグラフトなど)
手術の難易度としてはオンレーグラフトの方が難しいため、多くの場合はサイナスリフトやソケットリフトを用いることが多いです。ただし、歯を支えている骨は目減りしていますので、出来上がりの歯は元の歯より長い歯になります。
Gさんが受けた手術はオンレーグラフトでした。
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骨移植術ができない場合でもインプラントの代替案が存在する。
骨移植術が出来ない、もしくは避ける時に採用する代替案があります。
傾斜埋入
多くのインプラントはネジ型をしており、歯根型と呼ばれます。歯の根っこと同じ向きで入れるように使います。ただし、複数本のインプラントを歯で繋いで使う時は、インプラントが斜めになっていても良いとされています。傾斜埋入は意図的にインプラントを斜めに埋めて、複数本の歯を補う治療方法です。
オールオン4
顎の骨は場所によって硬い骨、柔らかい骨があります。硬い骨を狙ってインプラントを斜めに入れることで少ない本数で多くの歯を補える方法が、オールオン4と呼ばれる治療方法です。これは無歯顎(1本も歯がない)の場合に最低4本のインプラントを使って12本の歯を回復する治療法です。
診査の結果
左上の顎の骨は上顎洞まで5ミリ弱しかなく、インプラントを真っ直ぐに埋めるには骨の量が足りません。しかしながら、インプラントを斜めに入れることはなんとかできそうな状況であることがCTからわかりました。
画像はCTからシュミレーションをしたものです。画面中央の2本の青いインプラントの向かって右側が斜めになっています。向かって左もやや口蓋側に傾斜させています。
傾かない斜めのインプラントも作成が可能
斜めのインプラントだと歯も斜めにならないのか?という質問をいただきます。
斜めに入れたインプラントには角度を補正する部品をつなげて歯を作りますので、しっかりと噛める歯の形に作ることが出来ます。
まとめ
インプラントを埋める骨が足りない場合は、骨を増やすか、今ある骨を上手く利用して斜めに入れるか、という2択になります。
なんでも斜めが良いというわけでもありません、状況に応じて使い分けていきます。
骨の大がかりな移植手術の場合は患者さんの肉体的、精神的、経済的な負担も大きいのも事実です。時間も半年は長くかかります。
一方、傾斜埋入は医師の技術や経験が必要です。誰でも出来るわけではありません。歯科医院によって、インプラント手術の扱いは異なる場合が多く、セカンドオピニオンも含めてよく検討すると良いでしょう。