北川デンタルオフィスの北川です。
お酒を飲んだ後に歯が痛くなってしまうという方がいますが、これには考えられる原因が複数あります。
歯が痛くなるということは、口内が健康な状態ではない可能性もありますので、早めの治療、対応をおすすめしています。
アルコールの摂取で歯が痛くなるのは何故か?
考えられるポイントをいくつか紹介します。
ポイント1.歯髄炎を起こしている歯がある
歯髄炎は虫歯が歯髄(神経)まで進んだ結果起こることが最も多い病気です。
その痛みはドクンドクン、ズキンズキンと脈を打つような感覚です(拍動痛)。歯髄がただの神経線維の集まりではなく、血が通った組織で、虫歯菌によって炎症が起き、歯髄の血流が増えることによって起こるものです。
歯髄炎の痛みは間欠的にやってきます。特に就寝前などは起きやすくなります。
アルコールは体の血流を増加させますので、歯髄炎の痛みを活動させる引き金になるでしょう。
また飲酒に伴う睡眠不足、抵抗力の低下が歯髄炎の痛みを強くさせることも要因です。
ひどくなると眠れないほどの激痛が襲ってきます。
早いうちに歯科医院で治療をしましょう。
ポイント2.飲酒は嚙みしめ(食いしばり)を起こす
お酒を飲んだ翌日はいつもより眠いと感じる経験は多くの人が経験します。
アルコールは脳を覚醒させますので脳が起きている状態が続き、眠りを浅くします。
夢をよく見るのも脳が起きているためです。
嚙みしめ(食いしばり)は脳が起きている時に噛む指令を出していますので、浅い眠りが増えれば嚙みしめも長くなります。
歯は虫歯でなくても痛みます。
続く場合、癖になっている場合は嚙みしめに対応した歯科用のマウスピースを歯医者さんで作りましょう。
市販のものは長期間使うことで噛み合わせが狂う可能性があります。
- 歯髄への影響
嚙みしめや歯ぎしりの力を受けた歯は非常に敏感になり、知覚過敏症を起こします。長期間続く癖で歯と歯茎付近の歯がこぼれ落ちる現象が起きます。これは楔状欠損と言われ、歯肉退縮や知覚過敏の原因の一つになっています。 - 歯根膜への影響
歯と歯槽骨(歯を支えている骨)は歯根膜という靭帯でつながっています。噛んだ時にクッションのような感覚があるのは歯根膜があるからです。噛んだ感覚を脳に伝える重要な役目を担っています。歯根膜は嚙みしめで長時間押しつぶされると「歯が浮いたような」「歯が疼くような」「得も言われぬような」感覚を感じます。力が掛からなくなれば自然と回復しますが、飲酒が続くような時期は歯の痛みも続く可能性があります。 - 筋肉への影響
嚙みしめるということは筋肉を使っています。顎を閉じる筋肉(閉口筋)はいくつかありますが、代表的な咬筋(頬骨~エラの部分)、側頭筋(こめかみ)に痛みを感じることもあります。嚙みしめる場合は閉口筋だけでなく、首肩回りの筋肉が緊張します。後頭部の首の付け根あたりは嚙みしめで痛くなります、二日酔いの頭痛ではなく、嚙みしめで起きた筋肉痛の場合もあります。 - 顎関節への影響
嚙みしめる場合は顎の関節にも負担をかけます。長時間、自分の体重の約2倍ともいわれる力をかけ続けることで関節も相応の負担を受けます。耳の前あたりの痛みや口の開け閉め時の痛み、元々開け閉めで音がしている場合はそれが強くなったり、痛みを伴うようにもなります。
ポイント3.歯周病で歯茎が腫れている場合
歯周病は歯と歯茎の隙間に歯垢(細菌)が溜まって歯茎や歯根膜、歯槽骨を破壊する病気ですが、進行に伴う自覚症状はほぼありません。
症状を感じるのは疲労や風邪、睡眠不足など体の抵抗力・免疫力が落ちた時です。
飲酒によって、睡眠不足、抵抗力の低下が起きれば普段は免疫力で抑えている弱い歯茎が痛みだす可能性は十分あります。歯周病の治療、定期的なクリーニングを行いましょう。
ポイント4.親知らずで歯茎が腫れている場合
親知らずで痛むのはその周囲の歯茎であることが多いです。これも歯周病の一つと言えますが、やはり元気な時は免疫力で抑えている部分が飲酒に伴う睡眠不足・免疫力の低下に伴って出てくることがあります。
親知らずの抜歯、抜歯がすぐにできない場合は清掃を励行したり、薬を使うことで炎症をコントロールすることもできます。
歯の痛みがひどい場合の応急処置の方法とは?
飲酒後に歯が痛くなるのは、歯科医院がやっていない夜の時間帯であることが想定できます。
もし、歯の痛みがひどい場合は、以下のような処置を行いできるだけ早期に歯科医院の診療を受けるようにしてください。
- 冷やす
患部の頬などが熱を持って腫れている場合は冷やすことで少し和らぎます。 - 鎮痛薬を飲む
痛み止めは歯痛を抑えるのに有効です。普段から自分の身体に合う薬を確認しておきましょう。ただし歯髄炎は強くなるとロキソニンでも効きません。 - 市販の歯痛薬を使う
歯髄炎で虫歯の穴が分かっていれば今治水なども有効です。ただし、歯髄炎はどの歯が原因か自分ではわかりにくいもので、必ずしも穴が開いているわけではありません。
まとめ
飲酒がすべて悪いわけではありません。
ほどほどに楽しんでいただければ良いと思いますし、飲酒で歯や歯茎の痛みを感じるのであれば、サインを出していることもわかります。
これをきっかけに歯科医院でチェックを受けたり、治療を始めるのも良いと思います。