インプラント治療と同様に、セラミック治療も高額な治療費がかかります。そのため、できる限り安い治療費で治療したいと思っている方も多いでしょうし、その気持ちもわからなくもありません。
しかし、安ければ良いというのかと言われれば、そうとは限りません。
なぜ、セラミック治療を行うのか?
まず、保険診療では虫歯で歯の1/3から1/2ほどの穴が空いた場合、型を採って金属の詰め物(インレー、アンレー)を作って接着剤で止める治療を行います。もっと虫歯が進んだり、神経を取った場合はそっくり歯を覆うような被せ物(クラウン)になります。ここでは、金銀パラジウム合金といういわゆる「銀歯」を使います。
「銀歯」は見た目によくないと言われています。また、アレルギー源になり得る金属を含むとも言われますが、自費で使う金合金にも同じ成分は含まれています。
歯とぴったり合うかという点からはキチンとやれば及第点はとれますが、型どりの材料や保険診療の短時間の中ではうまくない場合も散見されます。
そこで自費診療であるセラミック治療を選択します。
メリットとしては、見た目に優れる。歯と同じ色合いに作ることが可能です。また、アレルギーの原因になりません。
しかし、デメリットもあります。金属よりも厚みが必要で、複雑な形だと隙間が出来るため金属よりも多くの歯質を削る必要があります。
どこでもセラミック治療を行えば良いのかと言われれば、このデメリットからそうとは言えません。時々、アレルギーでもない方が上の奥歯の全く見えない場所にセラミック治療を受けて割れてきたりします。見えない場所では耐久性からも精度からも金合金をお勧めしています。
セラミック治療を受ける上でのポイントは?
1.説明と同意
セラミック治療は自費治療です。患者さんはセラミック治療のメリットデメリットをよく聞いた上で決める権利があります。良いことだけではなく、デメリットがないか訊きましょう。どんな治療にもメリットデメリットがあります。
本当にセラミックにする必要があるのか?奥歯の場合は同じ自費でも金合金の方が割れない、長持ちするメリットがあります。噛み締める人や歯ぎしりする方の奥歯にセラミック治療を行うと早期に割れたり欠けたりする事があります。
2.治療の技術
自費と保険の違いは材料の違いと説明されますが、それは一部分です。材料がよければ全て良いということは全くありません。例えば、お寿司を食べるとします。研鑽を積み、実力のある板前さんと、腕を磨こうとしない板前さんの作るお寿司では、材料が一緒でも全く別のお寿司になります。
つまり、自費診療の場合は、技術費(高い技術、精密な治療にかかる費用)が多く含まれます。
セラミック治療はその材料特性から金属とは異なる考え方で治療をしなくてはなりません。もちろん、噛合せも理解していなくてはなりません。残念ながら、誰がやってもどこでやっても同じではないのです。 セラミックが割れたら保証をつける医院がありますが、なぜ割れたか理解せずに再治療を行い、何度も割れて患者さんが不信に感じて転院してくることは少なくありません。
技術の違いとは?
いまいちピンとこないかもしれませんが、技術の違いがわかりやすいポイントを挙げます。歯の成形はセラミック治療で非常に重要な部分です。セラミックは金属と2つの大きな違いがあります。
一つは割れる危険性です。金属よりも厚みがないと割れます。噛む力がかかる部分は特に要注意です。大人の場合は歯がすり減っていますので力のかかる部分が多く、しっかりと厚みを確保しなければなりません。一方削りすぎては歯の中の神経(歯髄)にダメージを与えます。
二つ目にセラミックは金属と異なり細かい形を再現する事が苦手な材料です。複雑に入り組んだ虫歯であってもセラミックを入れるためには一回り大きく削ります。なだらかな曲線を作ることでセラミックと歯の隙間は限りなく小さくなります。拡大鏡や顕微鏡を見ながら丁寧に行う必要がありますので、時間が必要です。治療人数をミッションにしている歯科医院の場合は、この部分に不安を感じます。
3.治療にかかる時間は適正か?
コストをかけない最も有効な手段は時間をかけない事です。もちろん、保険の枠内の治療でも必要なことですが、患者さんが高額な費用を負担してでも受ける治療について責務を負うべきだと考えます。時間がなければ説明もおろそかですし、治療そのものも、技術があったとしても十分に発揮しないでしょう。
また、歯を削った治療から短期間で次の治療になると、内部の神経(歯髄)が落ち着いていない場合があります。冷たいものや熱いものがしみる感覚です。これはゆっくり時間をかけて落ち着いていきますが、急いでセットするといつまで経ってもしみる感覚が抜けない場合があります。虫歯の状況にもよりますが、最低でも2週間、症状がでれば1ヶ月は様子を見ます。
安い場合は早く終わりにしたい傾向があります。
4.製作サイドの技術
セラミック治療は歯科医師が型まで採ったら、歯科技工士さんが模型の上で(あるいはPC上で)作ります。ここでも技術の差は歴然とでてきます。
PC上での製作は以前よりも良くなってはきましたが、レベルの高い手仕事には及びません。コストを下げる時に下請けが叩かれるといいますが、歯科業界も同じことがあります。薄利多売では良いものは出来ません。ここで製作された歯は、自分の歯として機能するわけですから、最高の技術で製作されたものの方が安心ですよね。
まとめ
世の中には良心的な先生もいますし、高いから良い治療とはいえない場合もあります。ただし、安いには必ず理由があることを前提にしっかりと考えた上で治療を受けるか決められてください。
自費治療専門の当院には、後悔された患者さんがたくさんお見えになります。後悔しないためには、その場の雰囲気で決めるのではなく、慎重に決めてください。