来院された経緯
通院している歯医者さんでは、いつも虫歯で神経を取ることになってしまうそうです。
自分の歯が弱いと言われるらしく、治療の度にどんどん歯が少なくなっていくのが怖いと訴えていらっしゃいました。
説明も治療をしながら、つまり口を開けている間にという感じで、本当にどうなっているかはよくわからないことに不安を覚えて、当院に通院されている患者様の紹介でいらっしゃいました。
そこで行なった治療
1.カウンセリング
当院では初診では、診療台で診察する前にカウンセリングルームでお話を伺います。
歯科恐怖症の人にもそうでない方にも、安心して、そして満足する治療にはコミュニケーションが必要だと考えているからです。
当院でのカウンセリングは治療も担当する院長である私が対応します。
Sさんは冷静にお話を筋道立ってお話してくれました。不安を感じているのは彼女の大人になってからの歯科治療の経験からでした。
「虫歯でどんどん神経が無くなって歯も少なくなってしまうのでは?」
強いトラウマはなく、感情が揺さぶられるほど怖いわけではないこと、しかし漠然とした不安が常につきまとい、治療が怖くなったということがわかりました。
歯科恐怖症は軽いものから、重いものまであります。
患者さんのパーソナリティによってこちらの対応は変わってきます。
丁寧に、優しくというのはもちろんですが、それでどの患者さんの不安が消えるわけではありません。
目の前の患者さんにとって、今まさに必要なコミュニケーションと治療方法を提供するように心掛けています。
自分の歯の状態が分からないまま、歯や神経がなくなっていくことが不安なのですから、事実を画像や動画で説明しながら進めていくことにしました。
これは、当院の通常の治療プロセスに含まれるものですが、説明の内容は患者さんによって異なります。
途中、分岐点になる時はうがいをしてもらって一休みした状態で大きなモニターに歯の画像で説明し、続く治療の内容を説明します。
これらは、治療前に説明を行っていますが、繰り返しになっても必ず経過と現状、今後は説明します。
不安を抱いている患者さんに、さっき言ったでしょ?というのはNGですよね。
不安の真っ只中でこちらの専門的な内容を100%記憶できる方はいません。必ず、至る部分で忘れてしまったり、記憶に入って来なかったりします。
何度も説明することで、情報が伝わり、半分程度は理解してくれると思います。
そして、そのコミュニケーションと時間によって患者さんは不安から安心へと少しづつ変化してくれます。
参考:歯医者が怖い!歯科恐怖症でも治療が出来るようになる8つの方法
2.治療
Sさんの歯は確かに虫歯が進行しやすい傾向にありました。丁寧に虫歯を取り、露出した神経を保護しました。
約半年の経過観察を行い、神経(歯髄)が元気であることを確認して、最終的なセラミック治療へと進みました。
怖い方は、早く終わって欲しいとリクエストされることが多いのですが、それは不安だからです。
不安を取り除いて、仮詰めでも日常生活に支障がない状況を作ってあげれば、ゆっくりでも構わないのです。仮詰めが終わると、みなさん、「これで仮ですか?もう治ったみたい!」と言われます。そして、皆さん必ず再びお見えになります。
歯医者さんへの不安が減っているから、来院に抵抗が少なくなるのです。
Sさんは、他の虫歯も何本も治療しましたが、満足されて、4ヶ月に1度、メインテナンスにご来院されています。初診の時の不安は全くないそうです。
「毎回、納得いくまで説明してくれるから、安心して治療を受けることができます」と言って頂きました。