銀歯で治療を行った箇所が、しばらくしたらズキズキしてきたということは、実はよくある話です。
「そんなバカな!!治療したのに!?」
と思う方は、以下の画像をごらんください。
メインテナンスを行った患者さんに、いよいよ銀歯の隙間が怪しいということで、ご説明し、治療を開始しました。
以上の画像が銀歯を外す前の画像です。一見なんともなさそうに見えます、、
しかし!
外したら、やっぱり虫歯でした。
ちなみに治療するとこうなります。色が付いていますが、悪い部分の除去はすべて行っております。
まるで、シロアリのように見えない部分を侵食されるケースがこの例です。それでは、なぜ銀歯の下が虫歯になるのでしょうか?
銀歯を使うケースとは?
虫歯で歯の大部分を削った場合や、神経を取ってから銀歯を被せる治療があります。メタルクラウンと呼ばれる治療です。
銀色の歯は保険治療で使われる金銀パラジウム合金という金属です。
銀歯の下が虫歯になるのはなぜ?
銀歯と歯のすき間が開いている場合は要注意
保険治療の銀歯は出来不出来に差が大きく出ます。歯と銀歯の境にすき間が大きい場合はどれだけ頑張って歯ブラシをしても歯垢が溜まり、虫歯になっていきます。気になったら、爪楊枝を境目にあててみましょう。引っかかるようなら隙間があります。
この角度では分かりづらいので、拡大してみます。
はっきりと隙間があることが分かるかと思います。この間に歯垢がたまっていうわけなんですよね。
歯磨きを怠れば、銀歯が被せてあっても虫歯になる
「被せたのに歯磨きしなきゃいけないの?」
時々いただく質問です。
確かに金属に汚れがついても虫歯にはなりませんが、歯と銀歯(金属)の境目は歯と歯茎のあたりで一番磨き残しが出やすい場所です。
特に隣の歯との間は食べカスが残りやすく歯垢が溜まるので、歯間ブラシやデンタルフロスを使う必要があります。
そして、虫歯にならなくとも歯周病は歯と歯茎の隙間から始まります。しっかりと丁寧にブラッシングをしましょう。
虫歯の取り残しがある
残念ながら、虫歯が取り切れていなかったと思われる虫歯はあります。これは患者さんには防ぎようがありません。自費、保険にかかわらずその先生の倫理観と技術的な問題です。
虫歯を取り切るためには「う蝕検知液」という虫歯の部分だけ染まる薬を使います。そして、必ず強拡大の拡大鏡(レンズが長い)や顕微鏡で確認します。う蝕検知液でも、肉眼でも見落とす虫歯が存在するからです。この事実を知らない歯医者さんも多いです。
銀歯と歯の間に隙間があり、虫歯が疑われる歯です。
外してみた結果、ひどい虫歯になっていました。
歯の中まで虫歯が進み、歯が腐っていたため、金属の柱が取れてきました。
内部の歯は柔らかくなっており、腐っています。
取っても取っても虫歯が残っていることがわかります。う蝕検知液で染めてもまだまだ赤くそまってきます。
歯茎が痩せて、歯の根っこから虫歯になる
銀歯を被せる場合は歯と歯茎の境目あたりまで歯を覆います。
しかしながら、噛みしめ(食いしばり)や歯ぎしり、または長年の噛む力によって、歯茎が痩せていくことがあります。銀歯で覆われていない歯の根っこが露出してきます。
長年の噛みしめ(食いしばり)で歯が削れて歯茎が痩せています。
すり減って銀歯に穴が開くと虫歯になります
治療を終えて長い年月が経てば、当然すり減ってきます。はじめは十分な金属の厚みがあったとしても、すり減ると穴が開くことがあります。穴から接着材は溶けだして、やがて内部の歯は虫歯が進んでいきます。穴が開いた場合は手遅れにならないうちに再治療をしたほうが無難です。
なぜこんなにひどい虫歯になるまで気がつかないのか?
銀歯の下の虫歯の侵食に気がつかない理由は以下のものが挙げられます。
銀歯が被せてある場合の虫歯はX線ではわかりづらい
虫歯は目で見て、触って、X線で調べてと様々な診査をします。
ところが、金属で被せてある場合はX線は金属を通らないため、内部は写りません。X線で見えるのは歯の根っこの部分からになります。
つまり、銀歯を被せてある場合は、よほど虫歯が進まないとX線ではわからないのです。
神経のない歯は虫歯になっても痛みがないため気がつかない
銀歯を被せる多くの場合は虫歯が進行したからです。ということは、神経をとってある場合が大半です。神経のない歯は虫歯が進んでも痛みを感じません。
気が付いた時にはすでに中の歯がずいぶんとやられてしまっていることがあります。
神経のある歯でも痛みが出ないことがある
神経を残したまま銀歯で被せてある場合もあります。神経(歯髄)には虫歯がやってくると、自分で殻を作って小さくなる力を備えています。
虫歯から神経(歯髄)を守る機能ですが、裏を返すと虫歯は確実に進行していきます。成人の場合は特に虫歯の進行は遅いため、内部で痛むことなくじわじわと虫歯が進行している可能性は高いのです。
実は、セラミックスにしても虫歯になるケースもあります。
銀歯だから虫歯になるというわけではありません。実は、自費診療であるセラミックスでも虫歯になります。根の治療のあと、樹脂を流す前の虫歯チェックが不完全だからです。
- 顕微鏡や拡大鏡で診ていないため、正確に虫歯を診断できない
- 虫歯を染める薬を使っていない。神経がある歯の場合には虫歯を染める液を使うのですが、神経のない歯に使うことを省略する先生が多いようです。
銀歯の下が虫歯になった理由(まとめ)
①材料の限界
銀歯はその特性上、歯と銀歯の間に隙間が出来てしまいます。磨きにくい場所から再び虫歯が始まります。
②保険診療の精度の限界
限られた時間と材料とで行う保険診療では素晴らしい結果を期待することは困難です。
③虫歯を取り残している場合も
また、虫歯を取り残してしまっているケースを毎日のように診ます。残念なことです。歯の治療は本当に難しいです。
拡大鏡や顕微鏡を使わなければ、虫歯を取り残す可能性はとても大きいです。
セルフチェック
- 古い銀歯がお口に入っている
- 銀歯の間にフロスを入れると引っかかる
- 銀歯のところが疼いたりしみる
上記のことを行ってみて、ひっかかった場合は、信頼できる歯医者さんに相談することをお勧めします。