大人の8割が罹る歯周病と戦うために7つの治療法を知る
1 歯周病の精密な検査を行う
歯周病を治すには、まずは現状を知る必要があります。歯周病の検査は数が多いのですが、何か一つ見れば完璧に分かる検査はありません。様々な検査を総合的に判断して、診断と治療計画を決めていきます。代表的な検査には、歯周ポケット(歯と歯茎のすき間の深さ)を図る検査、歯茎から出血するか、歯のぐらつき、歯垢が残っている割合、X線検査(パノラマ、デンタル、CTなど)による骨の溶け具合など、お口の写真を撮る、などがあります。当院では噛み合わせも重要な要素と考えていますので、上記にプラスして模型の型取りや噛み合わせの記録も行います。
2 歯周病の薬は歯磨き
歯周病の大元の原因は歯垢でした。歯垢を落とす一番効果があるのは、そう!歯ブラシです。あなたが毎日食事の後に丁寧に歯にブラシをかけることこそ、歯周病を治す最大の治療なのです。そして歯磨き(ブラッシング)がうまくいかないと、残念ながら治りません。つまり歯ブラシこそ、歯周病に一番効くお薬なのです。まずは歯ブラシで9割汚れを取って、あとはデンタルフロスや歯間ブラシも使いましょう。
3 歯周病の基本的な治療は歯垢歯石を取ること(PMTCとスケーリング)
歯周病を治すに歯ブラシで食べかすや歯垢を取ることと書きましたが、歯にこびりついた歯垢は歯ブラシでは取れなくなります。また、歯石となってしまうとちょっとやそっとでは取れません。歯医者さんではスケーリングと呼ばれる治療で歯茎の上の見える歯垢歯石を取っていきます。また、PMTCという方法で歯面を清掃します。当院では極力歯を傷つけないように超音波振動やアミノ酸のジェット噴霧などを使います。そして強拡大鏡や顕微鏡下で行いますので、的確に悪いところだけ、歯茎を傷つけないように取ることが出来ます。
4 歯周ポケットの奥深くの取りきれない歯石を取る
歯周病は歯と歯茎のすき間に出来た歯周ポケットという溝から進行します。この狭く暗いすき間に潜んだ歯垢や歯石を取るのですが、深くなればなるほど取り難くなります。また奥歯に行けばいくほど道具が届きにくくなります。奥の大きな大臼歯という歯は歯根が2股~3股に分かれていますので、股のすき間に入り込むと、道具が届き難く、非常に厄介です。ではどうしたら、歯根の奥深くにこびりついた歯石を取ることができるのでしょう。
4-1ルートプレーニング(ディープスケーリング)
麻酔をしておいて、歯周ポケットに道具を潜りこませて歯石を取る方法です。麻酔をする以外はスケーリングのとほぼ同じです。長所は身体の負担が少ないこと、術後の痛みや不快感も少ないことです。短所は、手探りで歯石を取りますので歯周ポケットが深く、入り組んだ奥になると歯石の取り残しが出やすくなります。
4-2 歯周外科処置(フラップ手術)
麻酔して、歯茎に切開を入れます。歯茎をいったん骨から剥がして歯根を剥き出しにさせて歯石を取ります。終わったら糸で縫い合わせて治りを待ちます。長所は歯石の取り残しがほぼないこと(先生の技術による)。短所は身体の負担が大きく痛みや腫れが出やすいこと、歯茎が痩せて歯根の露出が増えることです。術後にしみる感覚も強く出ることが多いです。
4-3顕微鏡下での内視鏡的ルートプレーニング
当院では顕微鏡を応用することで、ルートプレーニングと同じく歯茎を切ることはありませんが歯周ポケットを隙間から覗いて歯根の表面の歯石を取ります。長所は歯茎を切らない、剥がしたりしないため、身体の負担が少ないこと。通常は不可能、もしくは特殊な薬剤や手術を行わないと再生しない歯槽骨の再生が期待できます。短所は技術的に難しいこと、歯周外科手術と比べると歯石の取り残しの可能性は高いことです。
5 歯周炎で溶けた骨を再生させる
歯周炎で溶けた骨は基本的に戻ってきません。骨の量は現状維持は基本なりますが、いくつか骨を再生させる方法もあります。
5-1 GTR手術
フラップ手術の際に溶けた骨の周りにゴアテックス製の膜を置きます。ゴアテックスで囲まれた歯根の表面に新しい歯根膜と次いで骨が再生します。手術が難しいこと、骨の無くなり方が手術の対象になる条件が決まること、ゴアテックスの費用が高価なことがあります。
5-2エムドゲイン
フラップ手術の際に溶けた骨の周りにエムドゲインという豚タンパク質から生成された薬剤を塗布します。ゴアテックスと同様に骨が再生するといわれています。手術はGTR手術ほど難しくありませんが、それでも難易度は高い方です。
5-3 骨移植
5-4顕微鏡下でのルートプレーニング(ディープスケーリング)
前述したこの内視鏡的な手術は身体の治癒力を最大限発揮させることを第1に考えています。余計に傷つければその分回復に時間もかかりますし、組織は失われます。お腹の手術と同じです。北川デンタルオフィスではこの方法で骨を再生させることを数多く経験しています。
6 歯茎を痩せさせないための治療
歯周病は進行しても外から見た状態はなんら変わりありません。ところが歯茎の中では細菌が毒を出して徐々に骨が溶けています。そして歯茎は骨が溶けているにも関わらず腫れたままですが、治療を始めて歯にこびりついている歯垢や歯石を取ると、腫れた歯茎は引き締まります。腫れた歯茎から健康な歯茎になれば、骨がなくなった分だけ歯茎も下がることになります。そして歯茎が痩せて歯根が見えてきて、歯と歯の間にはすき間ができます。
6-1 ブラッシングは最も重要 (バス法はNG)
CMや歯科医院で指導される歯ブラシの毛先を歯と歯茎の間に45度で当ててマッサージする方法(バス法)は歯茎を痩せさせるためのブラッシングです。柔らかく、毛先の細い歯ブラシを歯と歯茎の間に向かって90度の角度か少し歯茎とは逆の方向に向けるつもりで当てます。シャカシャカ音がしないくらいにモゾモゾ動かすだけで結構です。
6-2 超音波スケーラーを使う。手用のスケーラーを使わない
手用のスケーラーと呼ばれる道具は先に細い刃物が付いており、これで歯石を取ります。時として必要ですが、歯茎を傷つける恐れが高いこと、歯根の表面を削りすぎてしまうため、治るものも治らなくなってしまいます。超音波スケーラーは水と振動で歯石を取りますので、歯茎も傷つかない、歯根の表面もほとんど傷つきません。歯茎がやせずに骨が再生する場を提供できることになります。