歯医者の麻酔に苦手意識を持っている方は多く、歯科恐怖症を患っている方の8割程度は麻酔が苦手としています。大人になっても注射に苦手意識を持っている方は多く、歯医者の麻酔特有の動悸に苦手意識を持っているのが原因のように思えます。
どうして麻酔が怖いのか?
きっと、この事で悩んで、歯医者さんに行けない人も多いんではないかと思うんです。
麻酔が怖い理由に 「痛い」 これが圧倒的に多いです。
痛くない麻酔のやり方はあるの?
以下の3つが挙げられます。
- 歯茎の表面に塗る表面麻酔を使うこと
- 一番細い針を使うこと
- 痛点の少ない場所に刺してゆっくり薬を入れる
精神的な緊張も痛みを強くする
また、緊張してドキドキしている人。呼吸が浅くて、手を握りしめて、落ち着きがなく、麻酔をする前から倒れそうです。こういう方は何をしても痛みを強く感じます。
深呼吸は緊張を解く効果あり
緊張が強い方は、私は一緒に深呼吸をします。「お鼻から、ゆっくり吸って、ゆっくり、ふーって吐きます」これを3分ほどすると落ち着いてくる方が多いですね。それから麻酔をします。
麻酔をした後に気分が悪くなる
どんな事が起きるのか
「気持ち悪い」、「ドキドキが止まらない」、「手が震える」、「ふわふわする」、「吐きそう」、などなど。 こんな症状を訴える方がいます。
もう治療が出来ないくらい症状が強い方もいますし、それがいつもの事で、今までもずっと我慢してきて、耐えている人もいます。
どうして気分が悪くなるのか?気分が悪くならない方法はないのか?
麻酔薬に入っているエピネフリンという薬の影響
エピネフリンは身体の中にあるもので、血管を縮める作用があります。麻酔薬に混ぜると、血管が縮むので薬が流れずその場に居続けます。だから薬がよく効くし、長く効きます。血が出るような治療の時も出血が少なくて済みます。
エピネフリンは麻酔薬には必要なもの
歯科の麻酔薬には無くてはならないものなのですが、このエピネフリンにとても敏感に反応してしまう人がいます。私が時間に追われて保険診療をしていた時には、きっと皆さん我慢していたんだと思います。気分が悪くなれば「今日は疲れているか、お風邪でもひいているんですね、またにしましょう」と言って対応していました。
エピネフリンに敏感な人は意外と多い
実は、これらは体調不良によって起こるものではなく、エピネフリンに敏感に、過剰に反応してしまう人がたくさんいることに気づきました。これも、自費で開業して患者さんと密なコミュニケーションが取れるようになったから気がついたことで、保険診療では気がつかなかったことです。
エピネフリンに敏感な人への対応は異なる麻酔薬を使う
同じ血管を縮める薬でも異なるタイプのものがあります。経験則ですが、エピネフリンのものと比べて効きにくいという思い込みがあり、一般的に歯医者さんが使いたがらないのです。保険診療の場合は治療時間がすべてです。麻酔が効かなければ麻酔を増やす必要性がありますし、時間もかかると思っているからです。
当院ではシタネストオクタプレシンという麻酔薬を使います。
今まで麻酔は気分が悪くなるものだ、自分がいけないんだと、そう信じていた患者さんにとても喜んでいただけてます。
ある歯科医師の先生は、いつも麻酔で気分が悪くなっていました。「私は歯科恐怖症なの、この仕事をしていても恥ずかしい」そんな事を言っていました。ある日シタネストオクタプレシンを使ってみました。「ぜんぜん違う。気持ち悪くもないし、ドキドキしない。生まれて初めて歯の治療で寝ちゃった!」そう喜んでおりました。つまり、麻酔を変更するだけで緩和できるものなのです。
当院では、よく使っていますし、効かないというデメリットは少ないです。血を止める効果はエピネフリンよりも少ないですが、そのほんの僅かな効果の差で、不快感が和らぐ場合があります。薬を一つ変えるだけで、その方の人生は変わるんではないでしょうか。
エピネフリンを半量にして使う方法もある
通常使用するキシロカインという麻酔薬はリドカインという麻酔薬とエピネフリンという血管収縮薬が入っています。エピネフリンを含んでいない純粋なリドカインと混ぜることでエピネフリンの量を減らすことができます。当院では、シタネストオクタプレシンで効きにくい場合や、止血効果が必要な場合に使います。
同じような経験で歯医者さんになかなか足が向かない方はぜひ、かかる歯医者さんにお願いしてみて下さい。もちろんこれだけではないですし、何よりも、そんな不安を感じているあなたに寄り添ってくれる先生やスタッフがいることが一番なんですが。
まとめ
歯の麻酔で気分が悪くなる原因の一つは麻酔薬の中のエピネフリンであり、エピネフリンは血管を縮めるためのもので必要です。
不快感の原因は、エピネフリンに過敏に反応してしまうことで、これの対処方法には、エピネフリンではない血管を縮める薬の麻酔薬を用いることです。
麻酔薬を変えただけで、気分が悪くなることがなくなる方がたくさんいらっしゃいます。