北川デンタルオフィスの北川です。
歯医者に行って中程度以上の虫歯治療のお願いをすると治療方法は2つに分かれます。
ポイント
保険での治療を行う。
使用するのは金銀パラジウム合金といういわゆる銀歯と言われているもの
自費治療を勧める。
使用するのはセラミックやハイブリッドレジン、金合金など。
自費診療で売上重視する歯科医院が存在することは否定できませんが、それだけがすべてではありません。
今回は治療する歯医者サイドで、どのような場合に自費診療をおすすめするのか、今回はわかりやすく保険治療の銀歯と自費診療のセラミックと比べて紹介します。
銀歯(保険治療)ではなく、セラミック(自費治療)の方が良いと判断されるのはなぜなのか?
多くの人は、自費診療はセラミックや金合金という材料の差として価格差があると考えているようです。
確かに保険適用されない材料を使うのであれば費用が高くなるのは仕方ないのですが、これは価格差に与える影響の一部です。
出来上がってくるセラミック単体の価格ではなく、診査診断、虫歯を取って歯の形を成形して型を採り、出来上がってきたセラミックを調整して接着、術後の調整まで行うのが一連の治療であり、この費用がわかりやすく「セラミックの治療」と言い換えているのです。銀歯とセラミックという材料の違いだけではなく、一連の治療の流れが違っています。
銀歯で治療した場合考えられるリスクとは?
①金属アレルギー
銀歯は正式には金銀パラジウム合金と云います。
組成は金(12%)、銀(約50%)、パラジウム(20%)、他に銅、インジウムなどが微量に入ります。金属アレルギーの原因として上がるのがパラジウムが多いのですが、金や銀にも反応する方もいます。パラジウムはプラチナの仲間で硬くて軽く、色目が良いことから宝飾品にも多く使われています。
歯科用の金属には自費用の金合金でもほとんどがパラジウムを含みます。
つまり歯科用の合金には必要な金属と云えます。金属アレルギーの方には使えませんし、アレルギー体質の場合には将来的なリスクを考えると避けたほうが無難でしょう。銀歯がある場合には、噛み締めや歯ぎしりで歯が削れると金属の溶出も増えますのでマウスピースをする対策は有効と考えます。
古い金属も酸化して黒くなっていたり、すり減りが強いものは研磨や交換した方が良いでしょう。
②銀歯の硬さは歯より硬い
銀歯を入れてから時間が経つと、歯と銀歯の境目の辺りから歯が欠ける現象が起きる事があります。
歯と金属の硬さが近い、または金合金は金の柔らかさで一緒にすり減る傾向がありますが、銀歯はやや硬いので歯の方が欠ける事が多いと云えます。
金合金やセラミックでも同じことは起きますが、銀歯のほうが頻度が高いと云えます。
③銀歯と歯との適合度
銀歯と云えども金も12%含有しており、決して悪い金属ではありませんが、保険治療で使用する場合は条件が悪くなります。
保険治療では時間が限られるため、歯を削る、型を採る、といった歯を作るために重要なプロセスに時間と手間と精度を高めるような材料を使うことができません。
制作サイドも安価な費用で制作になるため、時間と手間をかけられません。こういった銀歯治療は制約の多い治療の中で作られています。結果、歯と銀歯の境目には隙間や段差が生まれます。ゆるい状態であったり、ガタツキがあったりします。それは歯と銀歯の境目から再び虫歯になったり、外れやすい銀歯になったりします。
④噛みあわせが厳密に作られていない
③で述べたように銀歯治療のプロセスは制限が多いものです。歯にとって噛みあわせは、非常に重要な要素ですが、保険治療ではあまり追求されませんし、できないのです。銀歯が増えると、残った自分の歯に負担過重が集中するようになる場合もあります。
銀歯(保険治療)とセラミック(自費治療)とその治療のプロセスに違いがあります。
セラミックの方が絶対良いと判断されるケースにはどんなケースがあるのか?
セラミック治療に限定すれば「審美性」と「生体親和性」の2つです。(ここではオールセラミックスというメタルを一切使わない治療を前提にしています。他にもメタルセラミックスという治療方法もあります)
①審美性
オールセラミックスの最も優れた要素はなんと言っても審美性です。保険治療の前歯は銀歯に樹脂を付けたものになります。金属を使わないことで光が透過しますので天然の自分の歯と見間違うほどの出来上がりになります。
②生体親和性
メタルを一切使わないセラミックスは金属アレルギーの方には第一選択になります。ただし、強度は金属には叶いませんので、金属アレルギーの場合は割れそうな部位はジルコニアという材料を使います。
銀歯でも良いと思われるケースは?
噛み合わせの力があまりかからない小さな詰め物は銀歯でもうまくいくことが多いと云えます。ただし、現在ではコンポジットレジン充填という樹脂を詰める治療で対応できる場合が多いでしょう。コンポジットレジンは歯と似た色ですし、1回の治療で終わります。
銀歯以外の選択肢にはどんなものがあるのか?
①保険治療の場合
金銀パラジウム合金、コンポジットレジン、ハイブリッドレジン(部位が限られる)、金銀パラジウム合金と硬質レジン(硬い樹脂)の組み合わせ(前歯のみ)
②自費治療の場合
オールセラミックス(種類は多数あり、emaxやセレックなど)、メタルセラミックス(金合金とセラミック)ジルコニア、金合金(ホワイトゴールド、20K,22K,白金加金など)チタン、ハイブリッドレジンなど。
歯医者にセラミックを勧められた場合に質問しておきたいこと
①契約書
口頭のみでも自費治療は契約を交わしたことになります。費用や保証の有無(割れた時はどうするかなど)について明記されたものをお願いしましょう。
②材料による違い
今回、説明したような内容について説明を求めてください。先生によって多少の相違はあると思いますが、ほぼ似通た回答になります。
③決めるタイミング
高額な治療費について簡単な説明だけで直ぐに決めることは避けましょう。急かすような場合はあまり良い治療ではない可能性があります。時間をもらって考えたいことや、また質問をしてもいいか、などを確認しましょう。
まとめ
医院側に取って利益になることは間違いなのですが、重要なのは医院側のポリシーです。高額な治療費がかかるけれども、歯をキレイにかつ長持ちさせるには自費治療という選択肢もあり、お金をいただくからには制約のない状態で出来ます。
ベストの治療を行うという責任感を持って治療に当たるというポリシーを持っているかが一番大切なポイントではないかと考えます。