患者さんご自身で虫歯を見つけたというコメントをよく頂くようになりました。
虫歯を画像で自己判断するのは難しく、結果その診断が当たっていたとしても治療が必要である事実は変わりません。
虫歯は歯が腐る病気
虫歯は「磨き残しが出やすい場所に、長期間汚れが残り、歯垢が居続けるために、長時間、酸によって歯が溶かされて歯が腐っていく病気」といえます。
歯のどの場所で虫歯を見つけましたか?
虫歯になりやすい場所は「磨き残しが出やすい場所」です。それはどこでしょう?
答えは歯と歯の間、歯と歯茎の間、奥歯の奥の方などです。
磨き残しが出やすい場所は=見えない場所でもあります。
なかなか鏡を使っても見えづらい場所とも言えます。ではみなさんが発見した虫歯はどうなっているのでしょうか。
写真で見る虫歯の進行度
ここでは発見した状況と虫歯の進行度合いを繋げてみます。
①歯の噛むところの溝が黒く見える→CO、C1 | |
②歯と歯の間が黒ずんでいる、歯と詰め物(プラスティック)の間が黒ずんでいる→CO、C1 | |
③歯と歯ぐきの境目が黒ずんでいる、茶色になっている→CO、C1、C2 | |
④歯が透けて黒ずみが見える→C2、C3 | |
⑤歯に穴が開いているのが見えるC2、C3 | |
⑥歯の頭がなくなって、根っこだけになっている→C4 |
虫歯の進行度合い
CO→ 要経過観察の虫歯です。まだ穴は開いていないけど、虫歯になりかけた跡の変色があります。
C1→エナメル質にとどまっている虫歯です。痛みはありません。
C2→エナメル質を通り越して象牙質に入り込んだ虫歯です。冷たい、熱い、甘いもので痛みを感じます。
C3→象牙質を通り越して歯髄(歯の神経)まで虫歯が到達しています。歯髄が炎症をおこして、強い痛みを感じます。
C4→歯髄が腐ってしまい、歯の根っこの中まで虫歯が進んだ状態です。歯の頭はほぼ腐って無い状態です。
虫歯の進行度合いとその治療法
CO(シーオー)
COは要経過観察の虫歯です。まだ穴は開いていないけど、虫歯になりかけた跡の変色があります。
歯は常に歯が溶けたり再び硬化したりを繰り返している状態です。溶ける時間が長いと、溶けて白色に変化しますが、長い年月に亘って繰り返すと薄いベージュから薄茶色、茶色から褐色、黒褐色と変化していきます。
これらは穴が開いていない限り虫歯のなりかけた跡であり、治療が必要な虫歯ではありません。
参考:虫歯は自然治癒するというのは本当か?
治療は予防処置を行います。歯の表面は溶けた跡であり、健康な歯の表面よりも弱く、虫歯になりやすい状態です。フッ素を含む研磨剤を使ってクリーニングを行う、フッ素を塗る、歯の栄養になるミネラルを含んだ歯磨剤などでパックを行う、などを行います。最も効果があるのは毎日のブラッシングやフロッシングです。歯の溶けている時間を少なくすることが大事です。
また、COではありませんが、間違いやすいものにステインがあります。
ステインは飲食、嗜好品の色素沈着です。緑茶や紅茶など煮だしたお茶、コーヒー、ワインなどは歯に色が付きます。
歯ブラシが当たって取れやすいところよりも歯と歯の間や歯の溝に残りやすく、黒ずみになります。PMTC(PTC)と呼ばれる歯科衛生士が行うクリーニングでステインを取ることができます。
歯科医院のクリーニングはただクリーニングをしているわけではありません。虫歯なのか着色なのか診断しながら適切な道具と研磨剤を使って汚れを落として、歯を強くしながら傷を埋めていくことをしています。
私は歯科医師ですが、自分の歯を自分でチェックすることは、到底できません。
C1(シーワン)
エナメル質にとどまっている虫歯です。痛みはありません。穴が開いてしまったC1からは虫歯を削って取る事になります。
麻酔→虫歯の除去。C1ではまだ虫歯の範囲が小さいことが多く、できるだけ健康な歯は削らず虫歯の部分だけを削ります。
→レジンと呼ばれる樹脂を歯に接着させながら形を整えて詰めていきます。レジンは歯と似た色調なので、あたかも元あった歯のように修復できます。
C2(シーツー)
大人の虫歯は入り口が小さく、内部で広がります。C2の診断がついた場合は、象牙質で広がっていることを想定して治療を行います。
麻酔→虫歯や古い詰め物を取る→小さい場合はレジンで修復。大きい場合は型を採ってインレーやアンレーと呼ばれる歯の詰め物を技工士さんに作ってもらいます→出来上がったインレーやアンレーを接着剤を使って歯に接着させます。
C3(シースリー)
象牙質を通り越して歯髄(歯の神経)まで虫歯が到達しています。歯髄が炎症をおこして、強い痛みを感じます。
まずは痛みを取る治療をします。歯髄まで虫歯が進み、歯髄が治らない程度の炎症であれば歯髄を取ります。(抜髄)
歯髄の炎症が軽度で歯髄を保存できる場合もあります。この場合は歯髄に特殊な薬を応用して歯髄の保存を試みます。歯髄の生命力は年齢とともに落ちていく傾向にあり、必ずしも成功するとは限りません。
参考:親知らずの抜歯の条件と抜かなくても良かった治療事例
歯髄を取って(抜髄)根管充填まで行います。→噛合せの条件や残っている歯の量によってレジンで修復する場合、インレーやアンレーで修復する場合もありますが、神経を失った歯はもろくなる傾向もあり、歯が少ない場合は被せ物(クラウン)によって歯の形や機能を戻します。かつての差し歯治療といえばイメージし易いかもしれません。
C4(シーフォー)
歯髄が腐ってしまい、歯の根っこの中まで虫歯が進んだ状態です。歯の頭はほぼ腐って無い状態です。
治療は残った歯の状態によります。虫歯を取った上で硬い根っこが残れば、差し歯治療を行います。虫歯を取って根っこが差し歯を支えられないような状態であれば抜歯になります。
まとめ
結論を言いますと、インターネット上の写真を元に自分の歯を診断しようとするのはやめた方がいいと思います。
実際、自分で診断して結果を当てたところで、治療をしなければならないことには変わりありません。
歯の健康を守りたい、虫歯をひどくしたくないと思っていれば、疑わしくなった時点で、適切に診断してもらい、適切な処置を行うべきです。