歯医者さんを選ぶということは非常に難しいことです。
歯医者さんの数自体がコンビニよりも多く、選択肢が豊富な中で、一生ものである自分の歯の運命を左右するからです。
それにも関わらず、歯医者の選び方はよくわからないことが本音だと思います。
過去にも様々な記事の中に歯医者の選び方を書いていたのですが、この記事にまとめたいと思います。というのも、当院にお見えになる患者様も何件もの医院を選んだものの、最後には困り果てて当院にお見えになるといった経緯が多いからです。
歯医者さんの治療の良し悪しは患者様からはわかりにくいです。
歯医者探しに参考になる情報源
ホームページ(HP)から知る
まずは、ホームページがあるかないかは分かれ道になるかと思います。事前に情報収集するための手段は限られているからです。
ホームページの良し悪しは別にして、ホームページが無い場合は積極的に新しい患者さんを受け入れる意思がないという可能性があります。ホームページが無い理由は、近隣に対処してくれる業者が無いなど地域的な問題もあるかもしれません。しかし、どんなことが原因でも、情報がなければ、比較するための情報を収集することができません。
HPの内容
今は費用をかければいくらでもキレイなHPは作れます。
いくつかHPを見ていると、似たような内容であることに気がつくと思います。ただ、キレイに作っているHPよりも、更新頻度が高い、様々な情報がアップされている医院のほうが患者さんにより情報を伝える前向きな意欲があると言えるでしょう。
また医院のトップである院長の挨拶やスタッフの一言から人柄を推し量ることも出来ると思います。患者さんの感想なども情報になると思います。
これには、後述しているサクラのような評価も含まれておりますので、件数が少ない、古い評価しかないなどであれば注意したほうがよいかもしれません。
一般的な治療の内容はどこも同じことが書いてありますので、重要視せずともいいでしょう。
SNS(フェイスブックなど)
現在は歯科医師の名前を検索すればフェイスブックなどオープンなSNSでは検索されます。
個人のページでは、その先生の人柄が見えるかもしれません。プライベートを詮索するというより、人柄を確認する、程度に使うのもいいと思います。
クチコミ(噂)
クチコミサイトもありますが、最近はクチコミもお金をだせば書いてくれる時代ですので、あまりアテにはならないかもしれません。
逆に悪い評価が散見される場合は、慎重に考えましょう。
モンスターペイシェント(無理難題をリクエストする人々)であったとしても医院に全く落ち度がなかったかどうか、などを考えて総合的に評価しましょう。
親しくない知人や会社の知り合いレベルからの情報もクチコミです。親しくない分、その方の偽りのない情報があるかもしれません。
紹介(信頼できる人からの)
紹介はクチコミよりも信頼性は高くなります。ただし、これには偏見性や先入観が働いている可能性があるので注意も必要です。紹介してくれた人とあなたが同じ条件で同じ虫歯ということはありません。紹介してくれた人の時のような治療にならない可能性もあることになります。
紹介だから良い歯医者と判断するのではなく、選択肢の一つとして考えましょう。そして、その歯科医院のホームページを確認し、情報を精査することからはじめることが重要です。
参考にならない情報源
もちろん、世の中の情報には、広告が存在し、皆さんの客観的な評価を邪魔する場合もあります。
ガイドブック
歯医者選びの・・・名医〇〇選など、オススメの歯科医院を載せた本が毎年発売されています。
これは純粋な広告です。
出版元から歯医者に営業が来て、広告として載せていますので、腕の良し悪しではなくどれだけお金を払ったかで大きく載るか小さく載るかが変わります。
もちろん、参考になりません。
出版本
歯科医師などが自ら執筆した一般向けの本があります。殆どが一人の歯医者さんが1冊を書きますので、これも偏見や先入観が入った情報ではあります。鵜呑みにせずに、参考程度にしましょう。
書いた歯医者さんの意欲は良いと思いますが、強い信念があって書いている事が多いので、自己本位的な場合もあります。必ずしも思ったような先生かどうかはわかりません。
良い歯医者を見分ける方法
保険診療の場合
外観と待合室
外から見て看板が寂れていたり、玄関が汚いなどは論外です。
古い新しいではなく、清潔感があってキレイに保っている医院を選びましょう。
待合室は不安を感じている人がリラックス出来るような空間が望ましいでしょう。
洗面所・手洗い
最も汚れるところが清潔に保たれているかは、そこに働く人の人間性が表れます。
プライバシーの確保
医療機関ですから、できたら個室ですが、保険診療でもプライバシーを守る意味で最低でもパーテーション(ついたて)は欲しいです。
問診の内容は隣に聞こえてしまうので、恥ずかしくて言えないことも出てきます。
最近は医師の診察の前にトリートメントコーディネーターというスタッフが事前に問診をしたり、希望を訊いてくれる医院もあります。
電話応対
ネット予約もある時代ですが、できれば電話をしてみましょう。電話応対が丁寧で親切か、歯医者さんの雰囲気の一端がわかります。
電話応対が出来ていない医院はほぼNGと思っていいでしょう。その際はわがままではなく自分の都合を少しだけリクエストしてみましょう。
ただ丁寧だけなのか、親身に考えてくれているかがわかります。
予約診療
保険診療であっても予約診療は必須です。歯科は1回の診療で終わるほうが珍しく何度も通院します。
予約診療なのに待たされる場合は、1度のアポイント時間を15分など短くしている場合があります。
またキャンセルを見越して何人もの患者さんを重ねてしまい、同じ時間に来てしまい、待ち時間が増えたりします。短時間のアポイントでは治療は殆ど進みません。
結果、1本の歯を治すために半年もの通院が必要になり、その間も治療中の歯はむき出しのままでどんどん傷んでいきます。
何のために治療をしているのかわかりません。保険診療であっても30分のアポイントは必要でしょう。次のアポイントが1か月先はNGです。
コンスタントに3週間以上開く場合は相当仮歯がきちんとしていなければ歯を壊しているのか治しているのかわからなくなります。
説明と同意(インフォームドコンセント)
治療を始める前には「十分な説明を受けた上での同意」があるべきです。
しかし、保険診療の時間枠の中で十分な説明が出来るかは難しく、患者さんが同意せざるを得ない状況が殆どではないかと思われます。
良心的な医院では限られた診察時間の中だけではなく、待合室やHP上で治療に関するQ&Aを冊子や本、動画などでわかりやすく伝える工夫をしています。
レントゲン写真は理解が難しくても、お口の中の写真(口腔内写真)は実際の口の中の状況が写真やモニター上で観ることができます。
保険診療の中では受診する側も積極的に情報を得て、治療に参加することが双方にとってメリットがあるでしょう。
担当医制
診療所によっては、曜日や時間帯で医師が変わったりします。歯科は継続して治療を進めていくものです。カルテには必要最低限の情報しかないことが多く、慌ただしい時間の中で入れ代わり違う医師が診ることは望ましい状況ではありません。
継続して診るか、今日たまたま診るのかでは医師の責任感も変わってきます。担当医師に継続して受診できる、ことは重要なポイントです。
診察室でのコミュニケーション
診察台に乗るやいなや、背中を倒すのはNGです。
後ろから話かけられて、目線を合わすことなくの問診もNGです。
座った状態で目線を合わせて説明をしてくれる歯医者さん、スタッフがいる所は安心して説明を訊く事ができるでしょう。
患者側の意思を訊いてくれるか
説明はあっても、患者側からは中々質問しにくいものです。昔は怒り出す先生もいました。
時間に制約がある中でも質問にきちんと回答してくれる歯医者さんは貴重な存在です。
また、提案された治療を受けたくない場合や体調面などで受けられない場合など、患者側の意思を尊重してくれる医院が望ましいでしょう。
初めから分かる訳ではないのですが、上記の条件に多く当てはまるほど、患者さんを大切にしている医院とも言えます。
拡大鏡を使っているか
歯医者さんや歯科衛生士さんが口の中を見るときにかけるルーペのことです。低倍率加ら高倍率まで様々なタイプがあります。目が悪いからかけているわけではありません。
虫歯や歯垢歯石を取り残さないように、大きく拡大してきちんとした治療を行うためです。
2~6倍程度の倍率であれば、慌ただしい保険診療の中でも十分なアドバンテージを果たしてくれます。
予防歯科、定期検診を行っているか
歯医者さんは「痛くなったら行く」「外れたら行く」のではありません。
痛くなくても、年に数回はプロにクリーニングをしてもらいに行くのです。これが虫歯や歯周病を防ぐ非常に効果があるのです。
歯医者さんによっては、クリーニングを担当する歯科衛生士さんが在籍しておらず、先生は治療に追われて定期検診まで手が回らないという医院もあります。
予防歯科・定期検診は子どもだけのものではありません、長く通えるかかりつけ医を見つけてください。
痛みを取る麻酔
麻酔の上手下手は歯医者さんの技術を図る上では大事なポイントですが、麻酔をする、しないというポイントもあります。保険診療では、神経がある歯の治療には麻酔の費用が請求できますが、神経がない歯の場合は請求できません。
しかしながら、たとえ神経がない歯でも嫌な感じや痛みがないわけではありません。良心的な歯医者さんでは希望すれば麻酔をしてくれる場合があります。痛みに弱い方は相談してから受診するのもいいでしょう。
ラバーダム防湿(根の治療)
ラバーダム防湿は根の治療を正しく行うには必須ですが、保険診療の枠では良心的な歯医者さんでなければ手間を考えるとできません。
自費診療の場合
歯医者さんを選ぶ際の注意点は保険診療と同じと考えて良いと思いますが、自費は費用が大きくなり、歯医者さん選びも違う視点からも見ていきます。
診療の時間
自費診療はただ保険で扱えない材料を使うというものではありません。
時間をかけて持てる技術をすべて発揮して良い治療を行うものです。
当然、時間がかかります。
そのため、あまりにも診療時間の短い歯科医院が丁寧な自費診療ができるのか?と言われてしまえば、疑問が残ります。
治療の実績
審美歯科やインプラントを専門に扱う医院では治療の実績に年間1000本のセラミック治療をしているなど、数で実績を挙げています。では、上記の診療時間を確保して、ベストを尽くしながら年間1000本は可能でしょうか。
数回の治療を考えていくと、現実離れした数字であることは同業なら直ぐにわかります。
では他院よりも多くの実績をあげるにはどうすればいいでしょうか?
1回の診察にかける時間を短くすればいいのです。当然、コミュニケーションの時間も少なく、いくら上手な先生でも手を抜かないとできません。患者さんの見えないところで上手に手を抜くのが上手い先生がいます。
もちろん、診療所の規模によっては数字は大きくなります。規模が小さい割に数字が大きい場合は要注意です。消毒や衛生面など見えない部分でコストカットをしている場合もあります。
費用の高い安い
費用が高いのか安いのかは気になるところです。
1円でも安くという気持ちはわかりますが、歯科では「安かろう悪かろう」です。なぜなら、良い治療をするには拡大鏡や顕微鏡、十分なコミュニケーション、丁寧な治療、時間が必要です。
相場の半額近くで提供していたとしたら、やはりコストカットが必要です。
インプラントの実費を公開して、信頼を得ようとする医院がありますが、考えものです。
例えば、飛行機のチケットで考えてみましょう。飛行機のチケットは燃料代でしょうか?設備や人件費、運営費など様々な費用がかかり、そして利益を出さなければ会社も医院も継続しません。安い治療費には必ず裏があり、被害を受けるのは患者さんだけです。
最安値でも6~8万出した治療が不満でやり直しも期待できず、となると新しい医院で新しく10~15万の治療を受けるという不幸な結果が待っています。相場観を知ることは大事ですが、闇雲に安い医院、それを売りにしている医院は考えものです。
説明と同意と契約
自費診療では、費用が大きくなるため、口頭だけではなく書面で情報を取り交わし契約を交わすことが重要です。
万が一に治療を中断したい場合の返金、保証の有無、支払要件など必ず書面で交わす医院を選びましょう。お互いのためです。
歯科医師のキャリア
どこの大学なのかなど気になりますね。実際に大学の優劣はありますが、大切なのは卒業してから勉強を続けているか否かです。
博士号はあってもいいですが臨床の技術とはほぼ関係がありません。
臨床的な論文や発表をしている先生は積極的に勉強していると言えます。
卒後研修機関での受講キャリアはあったほうがいいですが、お金を払えば修了証を貰えるものですので、必ずしも良医とは限りません。
専門医
矯正、インプラント、歯周病、根管治療など専門医を謳う医院が増えて来ています。
一般医はすべての治療をオールマイティに対応しますが、専門医は難しい部分を一般医から紹介を受けて治療をします。これは患者さんにとって有益なことです。
最近はネットの情報で患者さんが直接専門医を尋ねるケースが多いようです。気をつけなければいけないのは、専門医はあくまで専門性の高い知識と技術はあるが、専門外は知らない事が多いということです。
根の治療を専門医で行ったが、実際に差し歯の治療をしようと次の医院に行ったら、この歯では弱くてあまり持たないと言われたなど。
歯を残すことは、私たちが最も大切にしている事ですが、先がない歯を残すことが良いのかどうかはよく検討されるべきです。
抜歯が適用される歯を何十万もかけて治療して1~2年しか持たない、という事が起きています。
患者さんが納得していればいいですが、なかなか専門的な事をすべて理解することは難しいと思います。かかりつけ医として信頼できる一般医を通じて、専門医を検討する方がベターでしょう。(自分で探していくことはお勧めしません。)
インプラントセンター
インプラントに特化している医院を選ぶ際はセカンドオピニオンとして検討しましょう。
インプラント治療を前提で診療しているため、他の選択肢が軽視されます。
また、ほとんどの「インプラントセンター」は自分で勝手に名乗っているだけで、公式なセンターはほとんどありません。
保険診療の窓口と一緒だと、大衆店と高級店の入り口が一緒になってしまうので、分けているだけです。
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンは必ず取ることをお薦めします。たとえ、自分にとって出せる金額の治療であっても、安易に行うべきではありません。小さな虫歯の治療をきっかけに噛み合わせが狂って、元に戻らなくなり、人生が狂ってしまう人も中にはいます。
患者さんが専門的な知識をすべて理解することはできません。複数の歯科医師、歯科のスタッフから話を聞いていると、同じことを言う人がいないことにも気づくことでしょう。治療が複雑になればなるほど、診断も治療方針も歯科医師によって変わります。
すべてを理解できなくても、訊けば誠意をもって答えてくれる先生、嫌な顔をせずに答えてくれる先生を探しましょう。
治療の材料や器材を全面に押し出す
医院によっては、まるで夢のような薬や器材を紹介して、虫歯や歯周病が治ると謳っています。
効果がないわけではありませんが、従来のものと比べて特段変わるわけではありません。
私たちの治療で最も大切なのは基本的な手技をどこまで丁寧に精密にできるかです。魔法の薬や器材に頼らなければ治らないのであれば、その先生の技術が問題です。
短期集中治療は要注意
最近は遠方からでも短期集中治療で治せますという案内を見るようになりました。まず、短期集中治療は結果がベストになりません。注意しましょう。
歯の治療は時間をかけてじっくりと取り組んだほうがより良い結果が出ます。遠方から通院したい場合は、2~2.5時間の診療を月に1回などで気長に構える方が良い結果が出ます。
毎日続けて通うと麻酔も効かなくなりますし、痛みを抱えて次の治療になるので、大きなストレスになります。医院側が短期集中治療を謳うのは自費診療になるからです。そのあたりのことも考えて検討しましょう。
無痛治療はない
無痛治療を謳う医院が増えてきました。限りなく無痛に近い治療はできますが、無痛はありません。点滴で寝ている間に行う静脈内鎮静法もありますが、かみ合わせは見る事ができないので、すべての治療を行えるわけではありません。
歯医者を選ぶ基準
最後までお読みいただきありがとうございます。
歯医者選びはなかなか難しいものですが、自分が求めている価値観に合う歯医者さんを見つけてください。
そして、近い、早い、安いだけで決めるのはオススメしません。
一生使う大切な歯です。
困ってから探すのではなく、まずはクリーニングだけ受けて、歯医者さん、やスタッフと話してみましょう。
一度削ったら戻ってこない大切な歯です。
どうか大事にケアしてあげてください。