当院は、完全自費診療の歯科医です。そのため、生まれてはじめて通う歯医者が当院であることは、まずありません。
皆さん、何かしらの理由で不安を感じ、口コミもしくはインターネットで検索して当院を探してきてくださる方がほとんどです。
その転院に至った理由は、やはり治療の失敗や思った結果にならなかったことが該当します。
歯の治療に悩みを感じているみなさんにとって他人事ではないと思いますので、ご紹介をいたします。
歯がしみるのはなぜか?
冷たい、熱いものがしみるのは歯の中の神経(歯髄)が怪我(炎症)をしているからです。
冷温の刺激を避けて過ごすことで、少しづつ落ち着いていけば元の元気な歯髄に戻ります。レーザー照射なども効果があります。
1〜2ヶ月経っても治らない場合は神経は弱ったまま(慢性炎症)で元に戻らない可能性が高いといえます。その場合は神経を取る治療が必要になります。
治療しても歯がしみる感じが取れない理由とは?
一つ一つ失敗した治療を確認したわけではありませんが、一般的に治療しても歯がしみる感覚が残るケースは、以下のような方針で治療を行なった場合です。
1.麻酔をしてからすぐに削っているから
麻酔をしてからはすぐに削らない。麻酔の中の血管収縮薬で歯髄は虚血状態になるからです。
15分程度で回復しますので、治療の内容にもよりますが5〜10分は待って歯の切削を開始するべきです。
2.歯の削り方がおかしいから
通常の治療の場合は、以下のように行います。理由は、歯を削る時は高速で削りますので熱が出るからです。歯髄は7度以上発熱すると怪我から立ち直れません。ですので、お水で冷やしながら削るのです。十分に冷やすことで歯髄の発熱を防ぎます。
- 歯髄に近い部分はキーンという高速の器械ではなく、ガタゴトと響く感じの器械を使います。これは虫歯の硬さを感じながら最低限の切削に押さえることができるからです。低速ですので発熱は少なくなります。
- 歯髄に近い場所はエキスカベーターと言われる耳かきのような小さな道具で虫歯を掻き取るように取ります。発熱せず、安全です。
3.歯髄がしっかり保護されていないから
たとえ歯髄まで距離があったとしても、温熱や細菌の刺激は歯髄に伝わります。その為、歯を削った後は歯髄を保護する事が必要です。
- プラスティック製の仮歯や仮の詰め物で削った歯面を隙間なくカバーする。隙間だらけの仮歯は歯髄の保護という点では弱いです。(仮歯のまま、治療を放置してしまっている人は要注意)
- 削った歯面に痛み止めの薬や接着剤でコーティングする
- 歯髄のそばまで削った場合は消毒して、歯髄を保護する材料を一層盛ってから樹脂などで形を補う。
4.歯髄の回復を待って治療する。治療終了が早すぎるから
歯医者の治療は早い方がいいと思っている方が多数いらっしゃいますが、実は、早いほうが歯髄のダメージは大きくなります。
初回に虫歯削り、歯髄のそばまで削ったとします。歯髄に軽い炎症が起きます。これが治まるのは状況にもよりますが、1週間はギリギリで短めです。
少なくとも症状が出ている時点でまた麻酔をして治療を行うと(たとえば銀歯を接着させるなど)歯髄はダメージから回復する前に再びダメージを負うことになります。疼く感じやしみる感じが続いている場合はアポイントを延ばすことを検討します。この場合は仮の詰め物がしっかりしている事が条件です。隙間だらけではしみてもおかしくないからです。また仮詰めが緩くなってくると噛んだ時の痛みが出ます。よく主治医と相談しましょう。
歯を全体に被せるクラウンという治療では2週間が最低ラインで〜4週間は間を開けることが多いです。
歯髄は噛むという物理的な刺激や、虫歯の刺激などで歯髄自身が自ら歯を作り出し、小さくなって身を守る能力を持っています、これは素晴らしいことなのですが、結果として壮年期以降の歯髄は生えてきた頃と比べると半分以下の容量になっていることが珍しくありません。
実は歯髄はただの神経ではなく、血の流れがあるお肉なのです。血管に富む組織の中に神経が入り込んでいると言ったほうが正しいでしょう。虫歯の痛みを経験したことがある方なら、「ドクンドクン」という脈打った痛みを経験したのではないでしょうか。まさしく歯髄が炎症を起こして歯髄に膨大な量の血液が流れ込んでいるのです。皮膚など柔らかい組織は腫れる事ができますが、歯髄の周りは硬い歯です。腫れることが出来ません。だから歯の痛みは特別痛いのです。
さて、歯髄の容量が小さくなると当然血流も少なくなります。血流が少ないと怪我をしてからの回復が思わしくありません。ひょっとしたら虫歯の治療前に、すでに息絶え絶えになっているかもしれません。元々生命力が弱い歯髄のことがままあり、歯髄をケアして治療を進めたとしても歯髄が傷んで元に戻らない場合があります。これも1〜2ヶ月様子を見て、回復しない場合は歯髄を取る治療が必要になります。
5.歯髄は弱ったままの状態が続くこともある
経過を追っていった時に、少ししみるけれどそれほど痛くはないという状況によく出会います。これは歯髄が慢性炎症を起こしているが正常に戻ることも壊死することもなく生きながらえている状態です。患者さんが望めばこのまま様子を見ますが、ゆくゆくは強い症状(歯髄炎)がおきたり、症状がなくなったと思ったら壊死して根の先に膿が溜まっている場合もあります。
また、歯ぎしりや噛み締めなどの無意識の癖があると歯に強いストレスが加わりしみる感じが起きます。虫歯治療でしみるのか、歯ぎしりや噛み締めでしみるのかを見極めるためには夜間のナイトガードと呼ばれるマウスピースが有効です。
まとめ
虫歯の治療には適切な方法があります。不安を感じる、違和感を感じる場合は、主治医が忙しそうにしていたとしても、素直に伝えましょう。
歯医者の仕事の一つはコミュニケーションです。痛みを抱えて悩んでいるのは、患者様側であり、歯医者はその痛みを理解しつつ治療を進めなくてはなりません。
意思疎通が上手くいかないと感じ取れたら、おそらく治療もそのまま目指す所に着地しません。セカンドオピニオンで他院を受診し、信頼のおける歯医者さんを見つけてください。