ポイント
前医で虫歯治療を提案されるも、やはり、しなくても良いという説明を受けた。
本当に治療が必要ないのか、なぜ一度は治療しようと言った先生がやはり、治療しなくていいと言うのか不安なので診て欲しい。
治療内容
診査診断
調べてみると、小臼歯の根元の歯茎の境目辺りに小さな虫歯が見えます。
歯茎を少し避けて見ると、ぽっかり穴が開いていました。
確かにわかりにくい虫歯ではありますが、これは早く治療したほうが良い虫歯です。
診断は虫歯中期(象牙質まで達した虫歯)で歯髄炎ではありません。
虫歯の診断で経過観察もありますが、穴が開いたら治療です。
穴が開いたら治りません。そして根の表面は虫歯が進みやすくその下にはすぐに神経(歯髄)があります。
しかも、磨きにくい場所だからこそ虫歯になってるのであって放っておいて良いことはありません。
また、大人は虫歯でも痛みを感じない場合も多く、痛みがないからと言って放置して良いことはありません。
- 虫歯が隠れた場所にあるので、治療をする側にとっては難しい治療
- もし、神経(歯髄)まで虫歯が進んでいたら神経を取る治療になる
- すでに歯の噛む場所は金属で治してあり、神経を取ると、次は全部金属で被せる治療になる
このような理由が重なると、治療を避けられるようなことはあるかもしれません。以上の事を患者さんに実際の写真を見せながら説明をしました。(約60分)
治療
別の日程で治療を行うことにしました。
麻酔下で顕微鏡を見ながら虫歯を慎重に取っていきます。
予想通り虫歯は奥まで進行しており、神経が顔を出しました。
大人の場合、特に壮年期を超えている場合は歯髄は生えてきた頃の半分以下の大きさしか
ありません。
大きさが小さいということは、それだけ血の流れが少なく、怪我をしたら治りにくい事を
意味しています。
通常は神経をすべて取りきる「抜髄」という治療になります。
治療の流れとしては、
- 麻酔をして虫歯の除去
- 露出した歯髄の表面に水酸化カルシウムを貼付
- 硬い材料で薬がもれないようにシール
- 6ヶ月間の経過観察(2ヶ月を超えて痛みが残る場合は抜髄に変更)
- 6ヶ月後に蓋をした硬い材料を削って除去、水酸化カルシウムを除去
- 水酸化カルシウムの下の歯髄が硬い歯の膜を作っていれば、歯髄の保存は成功
- 最後にコンポジットレジンという強化樹脂で虫歯の穴を封鎖して完了
一般的に早く治療を終えることを優先しがちですが、歯髄を保存する(歯を生きた状態のまま)ためには、十分な診査と診断。顕微鏡下での丁寧な治療、数ヶ月の経過観察が必要です。
治療のために削ったり麻酔をすることで歯髄はダメージを受けてしまいます。
治療の結果
さて、6ヶ月後に来院して頂きました。
まずは麻酔をする前に歯髄が生きているかを診断機器を使って確認します。
今回は歯髄を生きていました。薬を洗い流してコンポジットレジンという強化樹脂で虫歯でできた穴を隙間なく埋めて治療完了です。(約45分)