齢をとったら(老化)歯茎は痩せますか?
「先生、最近歯茎が痩せてすき間が開いてきたのってやっぱり老化ですか?」こういうご質問をよくいただきます。」本当のところはどうなんでしょうか。今回は歯茎が痩せていく仕組みとともにその原因をご紹介します。
1-1 歯茎が痩せる仕組みとは?
歯茎(歯肉)は歯を支える組織の一つです。他には骨(歯槽骨)や歯根膜、セメント質などがあります。歯茎の下には骨があります。実は歯茎と骨の位置関係というのはおおよそ決まっています。歯茎が痩せていくと骨がむき出しになる、ということはありません。つまり歯茎が痩せるということは、その下にある骨も痩せている(吸収している)ことを意味しています。歯を支える骨までなくなっていくことを考えると、単純に歯茎が痩せるといっても、決して楽観的に考えられないですね。
ではどうして歯茎と共に骨までやせていくのでしょう?
1-2-1 歯茎が結合していた歯が欠けてなくなる場合
歯茎は歯の表面に結合しています。壁に接着剤で張り付いているようなイメージです。もしも、歯が欠けていくような=壁が崩れ落ちるようなことがあれば、歯茎は歯にくっついていられません。歯茎や骨は自分たちが痩せることで歯に合わせているのです。
1-2-2 歯茎や骨に直接強い力が加わり続けた場合
歯茎は歯にくっついていますが、歯ブラシのような力が強く加わる続けると、この結合を引き剥がす事になります。歯茎はある一定の幅をもって歯と結合することが決められていますので、自分が痩せることで帳尻を合わせようとします。
2 歯茎が痩せる原因
2-1 歯ぎしりや噛み締め(食い縛り)で歯の根元が欠けていく場合
歯に歯ぎしりや噛み締め(食い縛り)のような無意識の下での強大な力がかかり続けると、歯にひずみの力が溜まり、次第に歯の根元の部分が欠けていくことが分かっています。1-2-1のように、欠けた歯には歯茎はくっついていられません。一般的には表側の歯茎が痩せていきますが、歯ブラシで強く磨けないような裏側痩せていく場合はかみ合わせからきています。マウスピースをすることで予防することができます。
2-2 歯ブラシの圧が強すぎる場合
硬い歯ブラシで強すぎる場合、特に歯茎が元々薄い方は歯茎が痩せていきます。歯にくっつこうとする歯茎を引き剥がし続けているからです。(上記1-2-2)八重歯がある人は表は歯茎が薄いので、ブラシ圧は要注意です。歯ブラシは柔らか目で毛先の細いものを、モゾモゾと使いましょう。
2-3 歯間ブラシやデンタルフロスも強すぎ、大き過ぎはNG
歯ブラシに限らず歯茎に強い圧が加わり続けるのはNGです。サイズが合わない大きすぎる歯間ブラシで歯茎は痩せます。またフロスも硬いものを無理やり入れていると歯茎を傷つけたり、歯茎を傷めることになります。歯間ブラシは適正サイズと使い方を。フロスは近年でてきた柔らかいものを使いましょう。
2-4 虫歯
虫歯が歯茎の付いているところまで進行してしまえば、歯茎はくっついてなどいられません。歯茎が痩せて、歯根(歯の根っこ)が露出すると、歯根は虫歯になりやすいため、さらに虫歯が進み、歯茎が痩せていくという悪循環が起きやすいです。特に神経のない歯の歯根は茶褐色になり、傷みが早く進みます。
2-5 歯並びが悪く、歯が重なりあって磨きにくい場合
歯並びが悪く、歯がガチャガチャと混み合っている場合は、うまく歯を磨けません。無理やり歯間ブラシを入れたり、飛び出している歯だけ強くブラシが当たったりして2-2,2-3と同じように歯茎が痩せていきます。
2-6 悪い癖
ここでいう悪い癖とは、歯茎に悪影響を与えるものです。前歯のすき間から盛んに息を吸って音を出す。チッチッというやつですね。爪楊枝を同じ所に挿したまま過ごすなど、何気なくしている事でも毎日の積み重ねは歯茎を痩せさせることにつながります。
2-7 歯周病
歯周病が進行すると、歯茎は腫れたままで骨が溶けていきます。治療を行うと、腫れていた歯茎が引き締まりますので、歯茎は急に下がり、痩せることになります。従来型の治療は歯茎を痩せさせて、歯と歯茎のすき間をなくすことでしたし、今でもスタンダードでしょう。当院では、なるべく歯茎を痩せさせないような歯と歯茎に優しい拡大精密治療を行い、良好な結果を得ています。
まとめ
歯茎が痩せる仕組みと原因について紹介しました。ここまでお読みになったら気づいているかもしれませんが、老化が入っていません。白髪のような純粋な老化現象では歯茎は痩せませんが、齢を重ねれば、歯はすり減り、荷重負担にもなりますし、歯ぎしり食い縛りの癖の影響が全く無い人のほうが少ないでしょう。虫歯も歯周病もかかる可能性は高くなります。それを老化というか病気というか、意見は分かれるかもしれませんが予防することが出来るのであれば、老化とは言えないのではないでしょうか。歯を長持ちさせるのはもちろん、良い状態でいるのもとても大事なことですね。
*当院ではメインテナンスだけのご相談も可能です。お気軽にご相談ください。