歯周病には大きくわけて歯肉炎と歯周炎に分かれます。歯肉炎はその名の通り歯肉に限局した炎症です。原因を取り除くと元通りに治ります。歯周炎は歯肉炎から進行した病態で歯肉の炎症から歯を支える歯根膜や歯槽骨が破壊されていく病気で基本的に元通りに治ることはありません。
ここでは歯肉炎について臨床でよく見るタイプの歯肉炎の特徴について説明します。
歯肉炎の種類
1.プラーク性歯肉炎
その名の通り、プラーク(歯垢)が原因で起こる歯肉炎です。プラーク(歯垢)は細菌の塊が歯の表面にへばりついている状態です。プラーク中の歯周病原菌が毒素を出すことで歯肉を攻撃します。プラーク(歯垢)が付着して3~4日で歯肉は赤く腫れ始めます。ブラッシングやスケーリング、PMTCなど歯のクリーニングを徹底することで炎症は治まり、プラーク(歯垢)が再び付着しなければ元に戻ります。
2.歯肉増殖性歯肉炎
(歯垢)が付着して腫れる場合とは異なり、薬物による独特の腫れを認めます。カルシウム拮抗性の降圧剤など長期に亘って内服している薬が原因になっています。
3.壊死性潰瘍性歯肉炎
歯にプラーク(歯垢)が付着した状態で体の抵抗力が著しく低下した場合、歯肉の表面の上皮が壊死、潰瘍をきたします。触れても痛い状態で食事もままならなくなります。
4.月経周期関連歯肉炎、妊娠関連歯肉炎
女性の場合月経や妊娠でホルモンバランスが変わります。プラーク(歯垢)があると容易に炎症を起こして歯肉が腫れて赤くなります。ホルモンバランスが戻るまでなかなか治らないことが多いと云えます。
各々の歯肉炎を治療する際の注意点とは
1プラーク性歯肉炎
最も一般的な歯肉炎であり、治療は原因であるプラーク(歯垢)を取り除くこと、きれいな歯を維持することです。ブラッシング、フロッシング、スケーリング、PMTCによるクリーニングを行います。2週間~4週間あれば元に戻ります。気をつけることはブラシ圧が強すぎれば傷つきますし、弱すぎると歯垢が取れません。生活習慣を変えることはある程度の反復練習が必要です、はじめから上手な人はいません、歯科医師や歯科衛生士と一緒に少しづつ上達を目指しましょう。
2歯肉増殖
薬物による歯肉増殖は薬物を変えなければ治りません。別の薬物が選択出来るのかを内科医に相談します。薬物を変えてしばらくすると歯肉の増殖は治りますが、その間はプラーク(歯垢)が溜まりやすく歯肉炎をおこしやすいので柔らかく毛先が細い歯ブラシを使って丁寧にブラッシングをします。
3壊死性潰瘍性歯肉炎
歯肉表面が壊死しており痛みでブラッシングができません。うがい薬を使うこと、ガーゼなどで歯の表面の汚れを取り、柔らかい歯ブラシで出来る範囲で汚れを取ります。抵抗力が戻れば自然と落ち着いてきますので、栄養と睡眠が不可欠です。4月経周期関連歯肉炎、妊娠関連歯肉炎 ホルモンバランスの変化による部分が大きく、プラーク(歯垢)の除去だけでは落ち着かないことがあります。うがい薬なども併用して清潔な状態を維持すれば時間とともに落ち着きます。
まとめ
歯肉炎は様々な状況で見ますが、よほどキレイにブラッシングできている方でなければ、どこかが少し腫れている程度はあるものです。ただし、長引くとそこから歯周炎という骨が溶ける病気につながっていきます。毎日のお手入れとは別に年に数回は信頼できる歯医者さんで磨き残しの出やすいところをしっかりとクリーニングしてもらいましょう。